FXCMジャパンの営業部スタッフが最新の活動状況をお届けします。|営業部ブログ「今週の活動報告!」

■ 緊急保証制度から考える中小企業向け融資のコスト

グローバル投資のポイント
19:00
2010/08/26

2008年秋に導入された緊急保証制度における保証協会の代位弁済額が拡大しています。中小企業庁によると、緊急保証制度による代位弁済額は、制度開始から今年6月までの20カ月累計で2,131億円となっています。緊急保証制度による融資総額は、約20.7兆円ですから、代位弁済率(貸倒率)は1.03%となります。

緊急保証制度は、2008年10月末に始まった景気対策の一つで、1社あたり2億8千万円を上限に、全国の保証協会が金融機関の中小企業向け融資を100%保証するものです。融資先が破綻した場合、保証協会が債務を全額肩代わりをします。ただ、保証協会が債務を肩代わりしたことで生じた損失は、最終的には国の税金で補填されます。つまり国民が負担することになります。

緊急保証制度と同じような制度として、過去に「特別保証制度」というものがありました。特別保証制度の際には、融資総額約29兆円に対し、最終的には9.1%にあたる2.6兆円の代位弁済(国民負担)が発生しています。

緊急保証制度では、元本の返済を猶予する据え置き期間を最長2年まで認めています。制度が開始したのが2008年10月ですから、元本返済の猶予がなくなるのは、今年(2010年)11月からとなります。これを機に、貸し倒れがさらに増えるとの見方もあるようです。仮に、「特別保証制度」と同じ貸倒率まで貸し倒れが増えるとすると、緊急保証制度による代位弁済(国民負担)額は1.9兆円となります。

日本のマネーストック(旧称マネーサプライ)が増えない理由として、一部の方からは中央銀行(日本銀行)の金融緩和姿勢が弱いため、との指摘が出されています。彼らの指摘によれば、中央銀行が金融緩和の姿勢を強めれば、民間銀行の貸出が増え、結果としてマネーストックも拡大し、デフレから脱却し、景気も良くなるそうです。

しかし、緊急保証制度の貸し倒れの状況を見る限り、彼らの指摘は、現実味がないことがよくわかります。緊急保証制度の状況は、中小企業に対する融資では貸倒率が高く、融資によって多額の損失が発生する可能性が高いことを示しています。こうした中、仮に中央銀行が金融緩和姿勢を強めても、民間銀行は損失を回避すべく、中小企業への融資を敬遠することを変えようとしないでしょう。

貸し倒れが発生しても構わないから、中小企業向け融資を拡大すべきだ、という意見も一部にはあります。その場合、必要なことは、中央銀行による金融緩和ではなく、緊急保証制度のように、貸し倒れの損失を国の税金で補填する(国民が損失を負担する)ことを保証すればよいのです。ただ、この方法は、融資という名の下に、国の税金を中小企業に分配すること(ばらまくこと)と経済的には同じことです。

日本のデフレ脱却策と称して、これまでに実施されたことがない奇異的な施策の実施を主張する方が存在するのは事実です。しかし、こうした方々の主張は、国民負担というコストを(一見)伴わないもののように見せていて、じつは単に税金(国民の負担)を特定のところに分配させているだけのことが多いです。国民負担をさせたいのであれば、国民負担があることを分かりやすい形で明示した上で是非を問うのが、真摯な態度と思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 企業の保守的な姿勢を示す有利子負債の状況

グローバル投資のポイント
18:00
2010/08/23

日本経済新聞の調査によると、上場企業1,757社(除く金融・新興市場企業)が有する有利子負債のうち長期負債(満期1年超)の割合は、今年6月末で69%と、リーマン・ショック前の2008年6月末比で6ポイント上昇し、1990年代以降で最高になっています。

上場企業の長期負債の割合が高まっている背景には、長期金利の低下があります。今月、新発10年もの国債利回りが7年ぶりに1%を割り込みましたが、企業が発行する社債の金利は国債利回りが基準となるため、社債の利回りも低下しています。

国債の利回りが1%を割り込むことは、そうそうありませんので、企業としては、金利が低いうちに長期の資金を調達しようとします。たとえば、新日鉄は今月、10年満期で100億円超の資金を調達する見通しです。

長期の資金を調達する動きが強まれば、調達した資金を元手に企業が事業を拡大させることが期待されますが、実際は違うようです。日本経済新聞の同じ調査によると、有利子負債総額は、今年6月末で171兆円と、3月末と比べて1%減少し、直近ピークである09年3月末と比べて5%減少しています。つまり上場企業は、長期の資金を調達しながらも、調達額以上に負債を返済していることになります。

調査によると、有利子負債として調達した資金のうち60兆円は、手元資金として企業に滞留したままのようです。これだけの資金が設備投資や雇用の拡大に使われれば、経済活動も活発になり、日本の経済成長率が高まることが期待されます。

言い換えれば、日本の経済成長率が低迷している一因は、手元に資金があるにもかかわらず、企業が事業活動を拡大させない点にあります。もちろん、調達した資金の使い道は、企業が自由に決めることですから、たとえ経済成長率が低迷していても、企業に指図をすることはできません。つまり、政府が企業に動いてほしいのであれば、企業が資金を使うように促す政策が求められるといえます。

政府自らが経済対策の名の下に資金を使うことは、こうした考え方と逆行しており、企業の代わりに政府が事業活動を担うことを意味します。こうした動きが行き過ぎると、いわゆる社会主義による経済運営と同じことになります。社会主義による経済運営が上手くいかないことは、歴史が証明していることです。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 危機ではなく好機と捉えてほしいドル安の進展

グローバル投資のポイント
18:00
2010/08/18

8月18日、日本電産は、米電機大手エマソン・エレクトリック(エマソン)からモーター部門を買収することで合意したと発表しました。エマソンのモーター部門は、洗濯機や食洗機などの家電用や、建物に組み込む空調システム用モーターに強いことで知られています。日本電産はエマソンからモーター部門を買収することで、米国への販路を確保できるほか、これまで着手できなかった大型モーターの分野に進出することになります。

報道によると、日本電産のM&Aは、国内外で30件目となりますが、買収額は今回が最大です。日本電産が、このタイミングで過去最大の買収を決断したのは、おそらく、ドル安円高の進展でドル建てでの買収力が高まったためと思われます。

マスコミ報道では、ドル安円高の進展による経済への影響を指摘する声が強まっています。たしかにドル円レートは、一時的とはいえ15年ぶりとなる84円台を記録しましたので、円高による輸出企業の採算悪化が気になるところです。

しかし、現在のドル円の水準(1ドル85円程度)が、過去の水準と比べて「大きく円高」であるとはいえません。なぜなら、ドル円レートは、物価水準を考慮していない名目値であるほか、対ドルでの評価でしかないからです。仮に過去に比べて「大きく円高」である、といいたいのなら、物価やドル以外の外貨に対する円の価値も考慮すべきと思われます。

日本銀行は、物価や様々な外貨に対する円レートを示す指標として実質実効為替レートを発表しています。これによると、現在の実質実効為替レートは、ドル円が一時的に79円台を記録した95年4月当時(今から15年前)と比べ3割ほど円安水準にあります。15年前と比べれば、世界各国の物価は上昇していますし、日本の貿易構造も米国中心からアジアへのシフトが進んでいるためです。

日本の経済成長にとって、円高が好ましいものではないのは理解しますが、だからといって、マスコミが表面的なドル円だけをとりあげ、「大きく円高」だと指摘するのは、やや客観性に欠ける報道のように思えます。また政府や日銀などの当局者を対象に、円高への対応を求める姿勢も疑問に思えます。

ドル円に限らず為替レートは、自国だけでなく相手国の状況も市場が織り込み決まるものです。日本が他国に比べ非常に強い外交力があれば別でしょうが、現実は全く逆であり、日本が単独で努力しても為替レートを動かすことは限定的と考えるべきです。

日本経済の成長を望むのであれば、日本電産だけでなく、ドル安円高といった環境変化を好機と捉え、新たなアクションをとる企業を増やすよう考えることでしょう。円高だから当局の助けを借りる、といった発想しかなければ、たとえ円高でなくても、日本の経済成長を期待するのは難しい気がします。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 年金制度の不信感を高める積立金の取り崩し案

グローバル投資のポイント
19:00
2010/08/06

一部報道によると、政府は、来年度の予算編成で、公的年金の受給者に給付される基礎年金の財源確保策として、年金積立金の一部を取り崩すことを検討しているようです。

基礎年金とは、国民年金と呼ばれるもので、20歳から60歳未満の日本国内に住む人(外国籍の人を含む)全員に加入が義務づけられている年金のことです。2008年度まで、基礎年金の給付金の約3分の1は、国の予算(国庫)から充当されていましたが、法律の改正により、昨年度(2009年度)から、国の予算から充当される規模は、給付金の半分(2分の1)に拡大することが決まっています。

本来、基礎年金への財源は、税金で賄われるべきですが、これといった増税がされていないこともあり、財源のメドがたっていません。国庫の負担割合が2分の1に引き上げられた2009年度(昨年度)と2010年度(今年度)については、財政投融資特別会計の「埋蔵金」を充当することで対応しましたが、2011年度(来年度)の財源の不足分(約2.5兆円)については、何も決まっていません。

来年度も「埋蔵金」を使えばいいではないか、との声もあるようですが、「埋蔵金」は、他歳出でアテにされていることもあるほか、現実に使える額も残り少ない状況です。増税によって年金の財源とするアイデアは、先の参院選で民主党の敗因とされるくらいですから、「埋蔵金」以上に検討が避けられているようです。

そこで、政府(厚生労働省)は、年金の積立金を取り崩し、国の予算に「貸す」形式にすることで財源を確保することを検討しているようです。過去にも、年金の積立金は財政投融資の原資として流用されていたことがありますので、仕組みとして問題はないだろう、というのが政府の見解のようです。

ただ、仕組みとして問題がないのかもしれませんが、年金積立金は、そもそも、遠い将来の給付のために用意されているものです。年金積立金の将来見通しとして、平成16年に実施された計算(財政再計算)では、国民年金の積立金は2040年まで増加する見通しとなっています。「見通し」ゆえにタイミングがずれることはあったとしても、当初の予定より30年も前から積立金を(事実上)取り崩すようでは、年金制度の持続性に(さらなる)疑義が生じるのは避けられません。

選挙による選出という仕組みを採用している以上、政治家が選挙民の要望を重視するのは、ある程度、理解できます。また年金積立金が、10年単位の将来に関することだけに、軽率に扱われがちなのも理解できなくはありません。ただ、そうした事情に理解を示し、将来に禍根を残す可能性が高い判断をすることが、本当にすべきことなのかを、政治家だけでなく、我々も真剣に考えるべきだと思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ いずれ意味がなくなるのかもしれない電子書籍の提携話

グローバル投資のポイント
19:00
2010/08/04

各種報道によると、NTTドコモと大日本印刷(DNP)の2社は、事業提携によって、電子書籍事業に参入するようです。2社は、年内にも雑誌、書籍、コミックなどのコンテンツを集め、電子書籍端末や高機能携帯電話(スマートフォン)に配信するサービスの開始するほか、配信から課金まで一貫して手がける事業会社の設立も検討するそうです。

携帯電話会社による電子書籍への参入は、KDDIが凸版印刷などと共同出資会社の設立で合意したほか、ソフトバンクモバイルも意欲を示している。NTTドコモの参入により携帯3社が出そろうことになり、携帯電話回線を活用した電子書籍事業の展開が加速しそうです。

携帯3社が電子出版事業に進出するのは、電子出版事業が、数少ない成長分野と見込まれることから、他者に先んじて電子書籍事業にて優位性を構築しようとしているためと思われます。

しかし電子書籍事業では、ユーザーに支持される端末技術が確立していないほか、既存の書籍と同じ内容を流用すべきか、それとも電子書籍ならではのコンテンツを提供すべきか、どちらがユーザーに支持されるかなど、不透明な部分が多々あります。こうした状況において、供給側が端末の仕様やコンテンツを事前に規定することは、かなりリスクが高い試みといえます。

NTTドコモとDNPの提携で興味深いのは、特定の端末メーカーやコンテンツ提供者を提携先として加えていないことです。KDDIの場合、端末メーカーとしてソニーが、コンテンツ提供者として朝日新聞が提携に加わっています。ソフトバンクの場合、これまでの流れから考えて、端末メーカーとして米アップルが提携に加わるのが確実視されています。

NTTドコモとDNPの狙いは、それぞれの強みである通信網と販売網(書店)で提携する一方で、端末技術やコンテンツなど、不確実性の高い分野については、多くの企業群と広く浅く付き合うことで、今後の不確実性を少しでもヘッジする点にあるのかもしれません。

従来型の書籍事業は、規制などの参入障壁が少なく、コンテンツ提供者は独自の創造性をベースに自由にコンテンツ作りを進めてきました。これが書籍事業の付加価値となり、業界全体の拡大を促してきました。

電子書籍も書籍の一形態であるならば、ユーザーの支持を広げるためには、規制が少なく自由に展開されるという書籍の特長を踏襲することが必要な気がします。言い換えれば、携帯3社が中心となっている提携話は、将来、無意味なものになるのかもしれません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 60円割れを試す展開が予想されるニュージーランドドル円

グローバル投資のポイント
15:30
2010/07/30

7月29日、ニュージーランドの中央銀行(ニュージーランド準備銀行:RBNZ)は、政策金利を0.25%引き上げ、3.00%とすると発表し、即日実施しました。利上げは、6月10日に続き2カ月連続の実施となります。

利上げの発表後、為替市場ではニュージーランドドル(NZD)が売られました。政策金利発表前に63.6円台だった対円レート(NZD/JPY)は、発表後、62.95円まで売られ、本日(7月30日)には、62円ちょうど付近まで下げています。

NZDが売られた背景には、RBNZのボラード総裁の声明文があります。ボラード総裁は、声明文のなかで、ニュージーランド国内外の経済成長の鈍化に懸念を示し、「今後の追加利上げの速度や上げ幅は(従来の見通しに比べ)緩やかになる可能性がある」と指摘しました。

最近の為替市場は、利上げ期待とともに上昇し、利上げ期待がなくなると下落する傾向にあります。NZDが下げたのは、声明文によりRBNZの追加利上げが期待しにくくなったため、と考えることができます。

ニュージーランド経済は、内需が弱く、景気の波は輸出先国の好不調に左右される傾向にあります。これまでは、中国を始めとする輸出先国の景気拡大とともにニュージーランド景気も拡大傾向にありましたが、今後は中国経済の減速とともに、ニュージーランド景気も頭打ちになる可能性が高まりつつあります。このため、RBNZが追加利上げに慎重な姿勢を示したのは自然のことと思われます。

RBNZの追加利上げが、当分の間、期待できない以上、NZDの上昇も以前ほどは期待できないことになります。足元では、ドル安につられる形で円高が進展していることも考慮すると、62円台をなんとか維持しているNZD/JPYは、7月6日以来の60円割れを試す展開になると思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ マネーの固定化を促す日米欧の国債大量発行

グローバル投資のポイント
17:30
2010/07/27

7月27日付の日本経済新聞(一面)は、「日米欧、国債にマネー滞留」という見出しで、先進国の資金が国債に向かっている様子を報じています。記事によると、日米欧では銀行の貸出残高が減少し、余った資金が国債を中心とした債券市場に流れていると報じています。たとえば、日本の国内銀行143行の国債保有額(5月末)は138兆円と過去最高を更新しています。また、米国やユーロ圏の銀行が保有する国債保有額も過去最高水準にあります。

2008年の住宅バブル崩壊を機に、欧米の銀行は、リスク許容範囲が狭くなり、貸出を中心にリスクマネーの提供力が低下しています。現在の経済システムでは、銀行が預金を貸出に回すことでマネーを拡大させることで経済発展を促すことが前提とされていますので、銀行が貸出に消極的になれば、マネーの拡大は阻害されることになります。

マネーの拡大が阻害されれば、以前のような経済発展を期待することも難しくなり、家計や企業や景気の先行きに対して慎重になります。このため、家計・企業の資金需要は低下し、それが貸出を減らす、という悪循環を形成します。

こうした悪循環を断ち切るべく、政府は借入(国債発行)を拡大させ、家計や企業の代わりに資金を使うことで経済の拡大を促そうとします。いわゆるケインズ政策です。このおかげで、日米欧の景気が過度に悪化することなく、現在の状況まで持ち直したと評価してよいと思います。

ただ、今後、家計や企業の資金需要が再び増え、経済活動が民間主導で拡大すると期待するのは、現時点では難しいと思われます。日本は、少子高齢化を背景に潜在成長率が低下する一方で、日本国内でリスクをとっても得られるリターンが少ないと判断する企業が増えています。

米国の場合、これまで経済を牽引してきた家計の回復が期待できません。米国の家計は、名目GDPと匹敵する負債を抱える一方で、不動産の評価額は住宅価格の下落に伴い低下したままです。米金融機関は、新しい金融規制に備えるべくリスク供与を抑えたままですから、家計は新たに借入を増やすことも難しくなっています。

ユーロ圏では、金融機関の資本不足問題が残っています。ストレステストにより、大半の金融機関は「問題なし」とされましたが、満期まで保有する予定の国債のリスクは無視するなど、ストレステストの信頼性に疑義が生じています。厳しめにみれば、ユーロ圏の金融機関は、米金融機関と同じようにリスク供与能力が低下しているとみていいでしょう。

こうした状況の中、政府が取るべき方策は、大まかに二つあります。一つは、民間主導の経済回復がなしとげられるまで、国債発行による歳出拡大を続けること。もう一つは、家計や企業が資金需要を増やすように政府が環境を整備することです。

国債発行による歳出拡大策を支援する方は、マネーが国債に滞留している状況を正当性の根拠として主張します。しかし、マネーが国債に滞留しているのは、家計や企業の資金需要が弱いためです。資金需要が高まれば、マネーは国債から流出します。

政府にとっては、家計・企業の資金需要を高めるために歳出を拡大させているのですから、資金需要が高まり、結果としてマネーが国債から流出することは、本来、歓迎すべきことです。しかし、マネーが国債から流出してしまえば、国債価格が低下(国債利回りが上昇)するため、政府は国債発行を維持するために多額のコストを支払う必要が生じます。

国債発行を維持するコストを支払うためには、歳出を削減したり、増税をする必要があるでしょう。しかし、こうした施策は、国民に指示されないものです。よって、政府としては、歳出削減や増税を回避すべく、家計・企業の資金需要が回復したとしても、国債発行規模をダラダラと増やし続けるのが、短期的には合理的です。

つまり、国債発行残高は、縮小されることなく、少なくとも維持されると考えることができます。仮にこの考えが正しいのであれば、過去最高水準にある国債発行額の分だけ資金が固定化されることになります。本来、民間活動に使われるべきマネーが、いつまでたっても国債として固定化される図式が続くわけです。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 根本治療にはならない米FRBの追加措置

グローバル投資のポイント
16:30
2010/07/22

7月21日、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は、金融政策に関する半期に一度の議会証言のなかで、米国経済は「異例に不透明な」見通しに直面しているとの認識を示しました。その上で、バーナンキ議長は、FRBが必要に応じて成長支援に向け一段の措置を講じる用意があるとも表明しています。

最近発表される米国の経済指標は、米国経済の減速を示しています。たとえば、米国経済との連動性が強いとされる非農業部門雇用者数は、6月に12.5万人の減少となりました。また、個人消費の代表的な指標である小売売上高も、6月は前月比0.5%減と、2カ月連続の減少となっています。

市場関係者の中には、米国経済の回復を期待する声が根強くありますが、バーナンキ議長が米国経済の先行きを慎重に考え、場合によっては一段の措置を講ずる意思を示したことは自然のことと思います。それは単に、最近発表された経済指標が悪化したからではなく、住宅価格の下落による米家計の過剰負債という構造的な問題が、ほとんど改善していないからです。

米国の家計が保有する負債総額は、2010年3月末時点で14兆ドルもあります。その多くは、住宅を保有するためや、消費を拡大させるために積み上げられたと考えられています。

一般に、負債の適正水準は、保有する資産や得られる所得に応じて決まるとされています。米家計の場合、保有する資産の多くは住宅や株式ですが、住宅価格の回復ペースは緩慢で、2008年につけた水準を回復できないままです。また、米国の失業率は、依然として9%を超える高い水準にあり、所得も弱いままです。

家計が保有する資産や所得が弱い状況において、家計が大きな負債を抱えている場合、消費が低迷するのは不思議なことではありません。米国政府による様々な景気刺激策がなくなった途端に、米国の消費が弱くなってきたのは、こうした図式が表面化したためと考えられます。

バーナンキ議長が、「必要に応じて」としつつも追加措置を講ずる意思を表明したのは、こうした図式を意識しているためと思われます。ただ、つらいところは、いくら中央銀行であるFRBが資産買取などの措置を実施したとしても、家計の過剰負債が直接、減少につながるわけではないことです。今後FRBは、米国景気の悪化とともに、様々な措置を実施するのでしょうが、家計の過剰負債という根本的な部分を解決できるわけではないため、米国経済が短期間で以前のような状態に戻ることは難しいといえるでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 豪ドル上昇の鍵を握る新興国の株式市場

グローバル投資のポイント
12:30
2010/07/09

7月8日に発表された6月のオーストラリア(豪)雇用統計によると、就業者数は、前月比4万5,900人増と、事前予想の1万7,500人増を大きく上回る結果となりました。また失業率は、5.1%と1年5カ月ぶりの低水準となりました。

為替市場では、オーストラリアの雇用環境が大きく改善したことでオーストラリアドル(豪ドル)が買われる展開となりました。たとえば豪ドル円は、豪雇用統計が発表された直後、76.2円台から77円丁度の水準まで一気に上昇し、翌日(7月9日)には77.5円台まで水準を切り上げています。

豪ドルが買われる背景には、オーストラリア準備銀行(RBA)による利上げ期待の高まりがあります。一般に雇用環境が改善すると、家計(消費者)の購買力が上がるため、物価上昇(インフレ)圧力が高まります。インフレを事前に防ぐには利上げが効果的とされていますので、RBAは利上げをするだろう、と考えることができます。

現在、オーストラリアの政策金利は4.50%と、日本や米国、ユーロ圏に比べ、高い水準にあります。このため、日本を中心とした先進諸国が、高金利を目当てに豪ドルを買う動きが根強くあります。仮に、RBAが利上げを実施すれば、日米欧とオーストラリアの金利差はさらに広がることになり、オーストラリアの高金利を目当てとした豪ドル買いの動きが強まる可能性が高まります。こうした図式を為替市場は織り込み、豪ドルは上昇したと考えられます。

RBAが利上げをするのであれば、単に雇用環境が改善するだけでは不十分で、新興国の景気拡大が必要と思われます。オーストラリア経済は、日本と同じように外需主導で拡大することが多く、足元も中国など新興国への資源輸出が景気拡大の礎になっています。仮に新興国の景気が減速するようでは、いずれオーストラリア景気も減速する可能性が高まるでしょう。雇用環境は、景気に遅れて動く傾向にあるため、現在の雇用環境の改善は、長続きしないと考えられます。

新興国景気の行方については、様々な意見が示されています。先進国の景気減速が本格化すれば、新興国といえども景気減速は避けられないとの見方がある一方で、中国を始めとする新興国のインフラ需要は底堅く、たとえ先進国景気が減速しても、新興国の景気は堅調に推移するとの見方もあります。

新興国景気の先行きを考える上で有用なのは、新興国の株式市場でしょう。株式市場は、景気に先んじて動く傾向にあり、仮に新興国の株式市場が堅調であれば、新興国景気の減速懸念も低下するでしょう。逆もまた然りです。

次回のRBA政策金利決定会合は8月3日です。それまでの間、為替市場では、RBAによる利上げ期待の高まり・後退を背景に豪ドルが乱高下することになるでしょう。RBAによる利上げ期待の温度感を測る上では、オーストラリア経済に関する経済指標だけでなく、新興国の株式市場もあわせて考慮に入れる必要があると思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 日本景気の先行き懸念を示した日本株の下落

グローバル投資のポイント
18:00
2010/07/02

7月1日に発表された日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが2年ぶりにプラスとなりました。業況判断DIは、ゼロが好況・不況の境目と考えられていますので、日銀短観は、日本景気は良い状態にある、ことを示したといえそうです。

一方で、7月1日の日本株は大きく下落しました。日経平均株価は5日続落し、終値は191.04円安の9191.60円と、年初来安値を更新しました。日本景気が良い状態にあるのなら、日本株が年初来安値を更新するのはおかしい、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、日銀短観の業況判断DIは、景気の現状を示すのに対し、株価は景気の先行きを示す、と考えられています。それならば、両者の間に乖離が生ずることは、それほど不思議なことではありません。

業況判断DIがプラスになるまで改善した背景には、新興国向けを中心とした輸出の拡大があります。大企業・製造業の業況判断DIを業種別にみると、自動車、電機といった代表的な輸出産業の改善幅が大きくなっています。いつものことではありますが、今回の日本の景気回復も、輸出の拡大によってもたらされたといえそうです。

輸出の拡大によってもたらされた景気回復は、設備投資や個人消費の増加につながることで景気拡大が長続きします。しかし、日銀短観の設備投資判断DIや雇用判断DIは、プラスのままですから、企業は、設備や雇用が余っている(過剰感が高い)と判断していることがわかります。これでは、たとえ景気が回復しているとしても、設備投資や個人消費の増加を期待することは難しくなります。

輸出が増え続ければ、いずれ設備や雇用の過剰感も解消されるという見方もできますが、頼みの輸出には、先行きに対する不透明感が強まっています。為替市場では、円高が進んでいるほか、回復傾向にあった米国景気にも変調の兆しが出てきています。日本株の落ち込みは、景気の先行き懸念を素直に示した結果のように思えます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 景気減速のシグナルを意味する5月の鉱工業生産

グローバル投資のポイント
11:00
2010/06/30

5月の鉱工業生産は、前月比0.1%低下と、3カ月ぶりの低下となりました。輸出の伸び悩みで輸送機械が落ち込んだことが指数全体の低迷につながりました。ただ、先行きの生産予測指数は、6月が前月比0.4%の上昇、7月も1.0%の上昇となっており、指標の発表もとである経済産業省は、基調判断を「生産は持ち直しの動きで推移している」に据え置いています。

ただ、注意が必要なのは、在庫の減少ペースが落ち着いていることです。鉱工業生産と同時に発表される在庫指数は、前月比2.0%の上昇となり、09年5月以来の水準に高まっています。

一般に、在庫水準が高まれば、企業は生産活動を抑制する傾向にあります。これまで日本の鉱工業生産が、急ピッチで回復してきたのは、単に出荷(需要)が強まっただけでなく、大きく減らしてきた在庫を積み増す動きがあったためといわれています。仮に、出荷の伸びが、現状と同じ程度であったとしても、在庫を積み増す動きがなくなれば、生産が抑制されると考えるのは自然です。

鉱工業生産は、景気との連動性が強いことで知られています。このため、鉱工業生産の伸びが弱まるようであれば、日本の景気回復の勢いも弱まることが予想されます。新興国向けの輸出は、今後も増加が見込まれるなど、外部環境が悪化する兆しはないとはいえ、今年後半の日本景気の行方については、少し警戒感を持ったほうがよいように思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 応益負担の受け入れ具合を示すであろう次期参院選

グローバル投資のポイント
13:00
2010/06/18

6月17日、菅首相は参院選マニフェストを発表する記者会見にて、消費税率の引き上げを言及しました。菅首相は、当面の消費税率として「自民党が提案している10%を一つの参考にさせていただく」と述べています。

今年度の一般会計予算において、国債による収入が歳入総額の48%を占める状況ですから、通常の考え方をすれば、歳出を削減するか、歳入を増やす方策を考えるのが、政権の仕事と思われます。民主党は、鳩山政権発足当時、歳出の無駄をなくすことが先決として、消費税率の引き上げを当面は見送る方針でしたが、国民の多様な声を考慮しようとすると、どうしても歳出削減は難しく、歳入を増やさざるを得ないと判断を変えたのでしょう。

マスコミなどは、菅首相が当面の消費税率を10%とした根拠が不明確だと批判しています。たしかに菅首相は、「自民党の提案を参考にして」としただけで、消費税率の水準を10%としていますから、根拠があるとはいえません。しかし、学界の議論ならともかく、政治の世界ですから、税率の決め方の根拠を明確にすることは、政治家の本質的な仕事ではないと思われます。むしろ、消費税率で歳入増加を試みることの是非や、歳出削減のあり方に目を向けない姿勢などを批判の対象とすべきでしょう。

一部政党などからは、消費税率を引き上げるとともに、法人減税を実施しようとしていることに反発する声が上がっています。ただ、現在の日本経済の問題点は、低成長にあるわけで、多少なりとも法人減税を実施することで、付加価値や雇用を創出する法人の活動を刺激付けすることは、筋の悪いこととは思えません。

消費税率を引き上げることで(いわゆる)庶民感情を損ねることを危惧する政治家も多いようです。しかし、歳出が拡大している背景の一つに社会保障関係費の拡大があります(今年度一般会計予算での社会保障関係費は、前年度当初予算と比べて9.8%(2.4兆円)も増えています)。社会保障関係費のほとんどは、国民がメリットを享受するものですから、応益負担の原則から考えれば、法人税よりも消費税や所得税でカバーするのが自然です。

来月実施予定の参院選や次期衆院選は、消費税率の引き上げの是非だけではなく、日本国民が応益負担の原則をどこまで許容するかが試されているイベントのような気がします。政府から貰えるものは歓迎するが、負担が増えるのは嫌だ、と考える方が存在することは否定しませんが、多くの方は、得られるメリットに応じて負担する(応益負担)に対して理解を示すのではないでしょうか。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ マネー縮小による景気後退も織り込み始めたユーロの下落

グローバル投資のポイント
15:30
2010/06/11

最近になって、欧州の銀行においてリスクを回避する姿勢を強めています。銀行が欧州中央銀行(ECB)に預ける翌日物預金残高は、6月10日に3,690億ユーロ(約40兆6,000億円)と、1999年のユーロ導入以来、最大規模となっています。

欧州の銀行間での資金のやり取りに適用される金利(欧州銀行間取引金利・EURIBOR)は、3カ月物で0.715%と、昨年12月中旬以来の高水準となっています。また1年物は1.269%と、昨年9月以来の高水準となっています。ECBに預ける翌日物預金残高の金利は0.25%ですので、資金に余裕がある銀行であれば、(期間の違いこそあれ)EURIBORで貸付ける動きが強まってもよさそうです。

ECBの翌日物預金に銀行の資金が集まり、EURIBORが高水準にある理由として、欧州の一部銀行での破綻リスクの高まりが指摘されています。南欧向け債券を大量に保有するスペインの銀行は、南欧向け債券価格の急落(金利の急上昇)によって多額の損失を計上し、破綻の危機にあるとされています。このため、スペインの銀行などは、欧州の他銀行から資金を調達することが難しくなり、資金が余った欧州の他銀行は、ECBに資金を預けているとみられています。

ECBの翌日物預金残高が積み上がっている別の理由として、昨年7月に実施されたECBの1年物オペが7月1日に満期を迎えることが指摘されています。銀行が返済する規模は4,420億ユーロと規模が大きいため、欧州の銀行は、あらかじめ返済原資をECBに預けている、という考え方です。

理由がどちらにせよ、銀行の資金が銀行間取引にまわらず、ECBに滞留している状況は、経済成長を抑制させます。資金の供給源となるべき銀行が、銀行にすら資金を融通せず、中央銀行(ECB)に資金を回している状況では、市中に流通する資金量(マネーサプライ)が縮小し、経済活動が萎縮する可能性が高まるからです。

ユーロ圏のマネーサプライ(拡大M3)は、4月に前年同月比0.1%減と、3カ月連続のマイナスを記録しています。欧州銀行が銀行への資金供給を渋る姿勢が続くようであれば、すでに縮小を始めているマネーサプライがさらに大きく縮小することも考えられます。

為替市場ではユーロ安に歯止めがかからない状況です。為替市場は、ギリシャを始めとするPIIGS諸国のデフォルト懸念だけでなく、資金制約を背景としたユーロ圏経済の縮小を織り込んでいるのかもしれません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 単なる価値観の変化ではすまない専業主婦志向の高まり

グローバル投資のポイント
19:00
2010/06/01

国立社会保障・人口問題研究所の「全国家庭動向調査」によると、「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」(いわゆる専業主婦)という考え方に賛意を示す割合は、2003年の41.1%から、2008年には45.0%に上昇しています。また、「子供が3歳くらいまでは、母親は育児に専念」という考えに賛意を示す割合も、2008年(85.9%)は、2003年(82.9%)から上昇しています。

興味深いのは、賛意を示す割合を年代別にみると、2つの質問とも、29歳以下の方が、30歳代よりも賛意を示す割合が高いことです。「夫は外で働き、妻は主婦業に専念」に対する賛意の割合は、29歳以下が47.9%に対して30歳代は41.7%、「子供が3歳くらいまでは、母親は育児に専念」の賛意の割合は、29歳以下が81.7%に対して30歳代は78.4%、となっています。
今回の結果を、女性の価値観の変化のため、と報道するところもあるようです。しかし、「全国家庭動向調査」によると、妻がフルタイムで働いていても、夫が全く家事をしない割合が16.0%(2008年)もありますので、働く女性の負担が大きいのは事実といえます。有識者の指摘の中に、「女性が正社員として長時間労働で疲弊するよりも、専業主婦として子育てに専念した方がラクと考えるのは当然」といったものがあるように、今回の結果は、価値観の変化というよりも、女性が負担を回避する姿勢が強まったため、と考えた方が自然な気がします。

女性が専業主婦を選ぶか否かは、ライフスタイルの選択の問題とはいえ、今回の結果は、日本の潜在的な経済成長を考える上で好ましいものといえません。日本は少子高齢化の影響もあり、年代が若くなるほど人口が少なくなります。つまり、働く人の割合が一定だとしても、時を経るごとに、日本の労働市場に参入する女性の数は減少することになります。さらに若い女性のうち専業主婦になる割合が高くなれば(労働市場に参入する若い女性の割合が低下することは)、労働市場に参入する女性の数は、より大きく減少することになります。

専業主婦が担当する家事や育児の価値を否定する意図はありませんが、労働市場に参入する女性の数が減少することで経済成長が停滞すれば、経済的な生活水準の向上も停滞することになります。家庭の幸せは、経済的な生活水準だけで決まるものではありませんが、経済的な生活水準が大きな役目を果たすことは否定できません。若い女性の働く意欲を推し量ることは、日本の経済成長の行方を考えるだけでなく、日本の家庭の幸せを考える上でも、今後さらに重要なものになると思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ デフレ圧力の高まりにつながるドル高の進展

グローバル投資のポイント
18:00
2010/05/27

ユーロ危機が進展する中、ドルがジリジリと上昇を続けています。米連邦準備制度理事会(FRB)が公表するドルインデックス(名目ブロード*)は、今年5月21日時点で105.32と、昨年(2009年)6月14日以来の高水準となっています。昨年12月1日には99.45を記録しましたので、ドルは約半年の間に5%強上昇したことになります。

*ドルインデックスとは
ドルの価値を指数化したもの。
値が大きいほどドルの価値が大きいことを意味する。
ドルインデックスには、物価上昇率を考慮した実質と、
物価上昇率を考慮しない名目がある。
(名目の方が、一般的な為替レートに近い概念)
またドルインデックスには、26カ国の通貨をもとに算出したブロードと、
主要7カ国の通貨をもとに算出したメジャーの二種類がある。

ドルの上昇は、欧州経済の混乱の裏返しという面だけでなく、米国景気の回復を反映したもの、という見方もあります。米国の雇用者数は、今年になって増加基調が強まっていますし、個人消費も設備投資も好調を続けています。こうした考え方を前提とすれば、ドル高は市場からの信任の表れともいえますので、米国当局者にとって良いことのように思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、米国経済の現状を考えると、ユーロを起因とした足元のドル高は、米国経済にとって、むしろ悪いことのように思われます。なぜなら、ドル高は、米国のデフレ圧力を高めるからです。

すでに米国にはデフレの影がまとわりついています。今年4月の消費者物価指数(コア)は、前年比+0.9%と、1966年1月以来の1%割れを記録しています。連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーによる物価見通しでは、個人消費支出(PCE)コアデフレータの伸びが、今年10-12月期には、1%以下に低下するとの意見が過半となっています。

債券市場でも米国のデフレ懸念を織り込みつつあります。米国10年債利回りは、5月25日に3.06%と、昨年5月18日以来の低水準となりました。世界的な金融不安が背景にあるものの、米国のデフレ懸念が米国債利回りの低下につながったとの見方は根強くあります。

最近の為替市場の動きは、めまぐるしいので、ドル高の流れがこのまま続くと言い切るのは難しいです。しかし、ユーロが売られやすいことに加え、北朝鮮と韓国との軋轢によって日本の地政学リスクが高まりつつあることも考えれば、円も徐々に買われにくくなるでしょう。米国経済の回復が、もうしばらくは続くとすれば、ドル買いがさらに進んでも不思議ではありません。ただ、その場合、米国経済は、デフレ圧力と戦うことになるのでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 政府だけではない邦銀が抱える日本国債の価格リスク

グローバル投資のポイント
18:30
2010/05/26

3カ月物ドル建てLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)は、11営業日連続で上昇し、0.536%と、昨年7月7日以来の高水準に上昇しています。米国で利上げが実施されたわけではありませんから、最近のLIBORの上昇は、銀行が以前ほど他銀行に対して資金を出したがらなくなっていることを意味します。

銀行が他銀行に対して資金を出し渋っている理由は、銀行が保有する国債や各種債券の評価損が大きくなり、破綻する可能性が高まっていると判断されているためです。ギリシャ国債の価格は大きく下落しているほか、スペインでは貯蓄銀行が破綻するなど、欧州の銀行の信用リスクは高まり続けています。

破綻リスクが少ないとされる銀行ですら資金調達が難しくなりつつあるわけですから、市場を動き回る資金は、より安全な資産とされる国債に向かいます。国債といってもギリシャのような国に向かうことはなく、財政事情がよいとされるドイツや、格付が高い米国に資金が向かっています。

日本の財政事情は、良いどころか、むしろ悪い状態にあるのは、多くの方がご存知の通りです。また日本国債の格付も、格付機関であるS&PでAAと、最上位格付から3番目に位置しています。仮に市場の資金がリスクを嫌っているのであれば、日本国債は避けられても不思議ではありません。

しかし、そうした中、じつは日本の国債にも資金が集まっています。長期金利の指標とされる新発10年物の利回りは、昨日(5月25日)夕方には1.19%まで低下し、昨年12月1日以来の1.2%割れを記録しています。これは、日本国債がドイツや米国に比べリスクがあるとしても、日本の銀行が、預金として預かった資金を日本国債に向けているためと思われます。

日本の銀行が日本国債に資金を投ずるのも無理はありません。たとえリスクが低いとはいえ、ドイツや米国の国債に資金を投じてしまうと、国債の価格リスクは低くても為替リスクを負うことになります。日本国債の価格リスクと為替リスクを天秤にかければ、日本国債の価格リスクの方が低い、と日本の銀行が考えているのかもしれません。

ただ、日本の銀行は、すでに多額の日本国債を保有しており、さらに日本国債を保有することで、結果的に日本国債の価格リスクを大きく抱えることになっている気がします。日本銀行が今年3月に発表した「金融システムレポート」によると、金利が1%上昇した場合の保有債券の損失額を示す金利リスク量は、昨年(09年)9月末時点で、大手行で3兆円、地銀で4兆円規模に達しています。

日本国債の利回りが急上昇する、という「国債暴落シナリオ」の是非については、一般の方々も含め様々なご意見がありますが、10年債利回りが1.2%程度の低水準であるほか、日本の財政事情や格付けの相対的な低さも考えれば、程度の差こそあれ、日本国債の金利上昇リスクは、かなり高いと見たほうが自然に思えます。また、日本の銀行の金利リスク量が高まっていることから、日本の銀行の経営リスクもそれなりに高いとなります。

日本国債は大丈夫、というロジックとして、日本国債の94%が国内資金で充当されている点が指摘されています。しかし、たとえ数%であっても、外国人投資家が日本国債を同時期に一斉に売り込めば、日本国債の利回りが急上昇するシナリオはありえます。

注意すべきは、日本国債が「暴落」することの有無だけでなく、「暴落」によって日本の銀行が多額の評価損を計上し、金融システム不安が再燃することです。日本はギリシャと違って大丈夫!と安心するのではなく、表には出てこない潜在的なリスクを気にかけながら、投資・運用方針を決めていく必要があるのかもしれません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 日本にとってチャンスかもしれないEUのファンド規制案

グローバル投資のポイント
17:30
2010/05/21

5月18日、欧州連合(EU)は、財務相理事会を開き、ヘッジファンドなどの投資ファンドに対する規制や監督を強化する規制案を採択しました。ファンド規制案では、ファンドの事業活動を認可制とした上で、運用手法やリスク管理に関する情報開示を義務付けるほか、大規模ファンドには自己資本規制を設けることが盛り込まれています。また、租税回避地のケイマン諸島などEU域外(第三国)に籍があるファンドについては、EU域内で販売する場合、第三国がEUと同等の規制を規制を備えることが必要となります。

この規制案に対して反対の立場を貫いていたのが英国です。英国には、欧州のヘッジファンドの8割、プライベートエクイティ投資会社の6割が、英国に本拠地があるとされています。ファンド規制案をきっかけに、ファンド関連会社が英国を含むEUから離れる可能性もあり、英国経済にとって規制案は大きなマイナスです。

EUの他諸国も、英国のこうした事情を理解しているはずです。それにもかかわらず、EUが英国を押し切る形でファンド規制案を採択したのは、足元でも進行している金融危機の一因がファンドの活動にある、と考える意見が多数あったためと思われます。金融危機の結果、巨額の損失を被った金融機関を救出するため、多額の公的資金を投入した経験があるだけに、当局者がファンドに対して厳しい姿勢をとりたくなるのも理解できなくはありません。

EUのファンド規制案は、市場にて否定的に受け止められています。そもそもヘッジファンドは、規制が緩やかな国・地域を本拠地とすることで運用コストを引き下げるとともに、自由な運用手段を用いることで、伝統的な投資手法を越えるリスクと利回りを追及してきました。そんなヘッジファンドに規制をかけてしまえば、ヘッジファンドの存在意義を失うことになりかねません。また、自由に動けるファンドですら規制がかかるような状況であれば、証券化市場への資金流入が細るのは目に見えています。

市場関係者の中には、EUのファンド規制案をきっかけに、金融市場での資金移動が滞るとの見方も出てきています。また、規制により金融機関がリスクをとりにくくなることから、信用収縮がおこり、実体経済も停滞するとの見方もあります。ひいては、ファンドを始めとする金融業が衰退するという悲観的なものも出てきています。

市場関係者が、こうした心配をするのは分からなくもないですが、仮にEUのファンド規制案が実行に移されたとしても、それによって金融業が衰退するようなことはないでしょう。2008年の金融危機によって、先進国は過去最大級の金融緩和策を続けており、世界のマネーは膨張しています。EUは、こうした膨張したマネーを規制によって封じ込めようとしているわけですが、膨張したマネーは規制の目をくぐりぬけ、あちこちに動き回ります。動き回りたいマネーを取り扱うべく、金融業のニーズは高まることはあっても、衰退するとは考えにくいです。

規制によってEUへの資金流入が細ることはあるでしょう。しかし、世界全体でのマネーが膨張している以上、EUで流通するマネーの減少分は、他地域に波及するだけです。世界最大の経済大国である米国にマネーが流れる可能性が高いと思われますが、米国でも金融の規制を強化する案(通称ボルカールール)もありますから、日本にマネーが流入する展開も考えられます。

日本の産業振興の観点からすると、EUのファンド規制案や米国の金融規制強化案が実施されるのであれば、日本はあえて金融規制を緩和するのが好ましいと言えます。膨張するマネーの流通拠点が欧米から日本にシフトすれば、日本の金融業界が発展するだけでなく、日本に流入するマネーが日本の他産業に波及することも充分に期待できるでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 日本の経常収支が赤字になるタイミング

グローバル投資のポイント
17:30
2010/05/21

経済系の新聞・雑誌などで、簡単な特集として日本の経常収支が取り上げられることが増えてきたようです。内容は、どれもほぼ同じで、日本の経常収支が2010年代半ばに赤字になる、というものです。

日本の経常収支は、比較可能な1985年以降、一貫して黒字を続けています。このため、日本に住む多くの方は、日本=経常黒字国、というイメージをお持ちになっていると思います。その日本が、いずれ(2010年代半ばに)経常赤字国になる、という内容は、ある意味、衝撃的な印象を与えているのかもしれません。

日本の経常収支が赤字になる、というロジックの根底には、高齢化の進展を背景に日本の貯蓄率がマイナスになる可能性がある、という点にあります。一般に、高齢者が増えると、過去の貯蓄を消費に回す動きが強まると言われていますので、貯蓄率は低下すると考えられます。過去のデータを見ると、1980年代には20%台だった日本の貯蓄率は、2008年には3.3%まで低下しています。今後も高齢化が進展するのであれば、日本の貯蓄率がさらに低下し、いずれマイナスになっても不思議ではありません。

貯蓄率がマイナスになると、なぜ経常赤字になるのか?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。これは、マクロ経済学の教科書に記載されている「貯蓄投資(IS)バランス」を使ったアイデアです。

貯蓄投資バランスは、国民総生産(Y)の定義から導き出されます。GDPは、消費(C)、投資(I)、経常収支(X)の3つから構成されます。つまり、

Y=C+I+X

となります。この式を以下のように変形します。

X=Y-C-I

ここで、Y-C(国民総生産から消費を差し引いた額)は、貯蓄(S)を意味します。つまり上の式は、

X=S-I

となります。この式を見れば分かるように、貯蓄(S)がマイナスになれば、経常収支(X)もマイナスになることが分かります。

高齢化が進展するから貯蓄率はマイナスになる、という説明は直感的で分かりやすいのですが、現実には、日本の貯蓄率が2010年代半ばまでにマイナスになるのか言い切れない部分があるように思えます。それは、日本の高齢者が、貯蓄を取り崩してまで消費をしない、ということではなく、たとえ日本の高齢者が、貯蓄を取り崩す形で消費を増やしたとしても、それをカバーするだけの所得が、海外で生ずる可能性があるからです。

経常収支は、主に、モノの輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収支」、旅行や運輸と言ったサービスの輸出額から輸入額を差し引いた「サービス収支」、海外からの配当金・利子の受け払いの差額である「所得収支」で構成されます。日本の消費が増えれば、モノやサービスの輸入が増えますので、貿易収支やサービス収支が赤字になる可能性はあります。

一方、所得収支は、日本の消費動向ではなく、これまで蓄積してきた対外資産と、対外資産の運用利回りによって左右されます。日本の対外資産は、519兆円(2008年末)もあり、これから高齢化の進展によって貯蓄が取り崩されたとしても、今後10年程度は、日本の対外資産は高水準を維持すると思われます。また運用利回りも先進国を中心に金利が低水準にあるため、今後さらに金利が低下するよりも、(多少なりとも)金利が上昇すると考えた方が自然です。

こうした条件を考えると、日本の所得収支は、今後も大きく減ることはなく、経常収支を下支えすると思われます。あくまで目安でしかありませんが、円高と低金利が進んだ2009年ですら、日本の所得収支の黒字額は12.3兆円もありました。つまり、経常収支が赤字になるためには、貿易・サービス収支で10兆円以上の赤字を計上する必要があります。

世界的に不況色が強まった2009年の貿易・サービス収支は、2.1兆円の黒字でした。今後、世界経済が回復を続ければ、輸出の拡大を通じて貿易・サービス収支の黒字額も拡大する可能性が高まります。

つまり、高齢化の進展によって貯蓄率が低下し、経常収支が赤字化することは、いずれは生ずるとしても、2010年代半ばという短い期間では、ちょっと難しいように思われます。日本の経常収支が赤字化するのは、2020年に近いタイミングと考えた方が無難かもしれません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ ギリシャ経済の先行きがポイントとなるユーロ下落幅の目安

グローバル投資のポイント
12:00
2010/05/14

ユーロの下落が止まりません。5月10日、欧州中央銀行(ECB)は、ユーロ圏諸国の中央銀行が国債の買い入れを始めたことを明らかにしました。報道によると、ユーロ圏の中央銀行が買い入れているのは、ギリシャ、スペインなど財政悪化が指摘されているユーロ加盟国の国債のようです。

それまでのユーロ売りの材料は、ギリシャのデフォルト懸念ならびに、ポルトガルやスペインといった他財政悪化国への波及懸念とされてきました。ユーロ圏・中央銀行が、こうした国々の国債を買い入れるのであれば、理論的にはデフォルトはなくなるため、ユーロ売りも一服すると思われました。

しかし、その後もユーロは下落をします。5月14日の東京外国為替市場では、ユーロドルが一時1.2516ドルと、昨年3月5日以来(1年2カ月ぶり)の安値を記録しています。またユーロスイスは、1.3997スイスフランと、ユーロ発足以来、過去最安値を記録しました。

一般に、財政悪化を背景に他国からの資金調達が難しくなった国が経済状況を回復させるには、財政を緊縮するだけでは不十分で、自国通貨安や極端な金融緩和が必要とされています。ただ、ギリシャの場合、通貨は自国通貨ではなく、他国も使用するユーロになっていますし、金融政策もギリシャ中銀ではなくECBが決定しますので、ギリシャ単独で考えた場合、選択肢は緊縮財政しかないことになります。

こうした図式があることから、市場関係者に限らず、多くの方は、ギリシャ問題は長期化する、と考えているようです。EU当局によるギリシャ救済策が実施されたとしても、ギリシャではデモや暴動などが治まっていません。緊縮財政を強要されることを嫌ったギリシャ国民が、ユーロからの離脱を選択するのではないか、との見方も出ています。

ブログなどを拝見すると、ギリシャ問題が長期化し、ギリシャがユーロから離脱するのだからユーロは安くなって当然、といった意見を目にします。ギリシャ問題でユーロ圏経済が悪化しそうだ、だからユーロが安くなる、というのなら、理解できますが、ギリシャがユーロから離脱するからユーロは安くなる、というのは、あまりロジカルに思えません。なぜなら、ギリシャがユーロから離脱することは、ギリシャ以外のユーロ加盟国の資金負担が軽減されるなど、ギリシャ以外のユーロ加盟国にとって経済的メリットが大きいからです。言い換えれば、ギリシャがユーロから離脱するのであれば、ユーロは下落するのではなく上昇してもいいくらいです。

ユーロの下落が止まらない、という現象から考えると、市場はギリシャがユーロから離脱するとは考えていない、と考えた方がロジカルです。ギリシャがユーロから離脱しないことを前提とすれば、ギリシャ経済を回復させるためにユーロ安は不可欠となります。またギリシャを支援する他ユーロ国にとっても、ユーロ安は輸出環境の改善を通じて景気を押し上げます。ユーロの下落が止まるのは、ギリシャのデフォルト懸念ではなく、ギリシャ経済の回復の道筋が見えてくる頃、とも言えそうです。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ ギリシャ危機の後に求められるユーロ加盟国の財政規律の強化

グローバル投資のポイント
19:00
2010/05/10

5月10日未明、欧州連合(EU)の緊急財務相理事会は、ユーロ圏諸国が(ギリシャのような)資金難の国を支援する「欧州安定メカニズム」に対して、5000億ユーロの資金枠を用意することで合意しました。報道によると、EUの執行機関である欧州委員会が、600億ユーロの融資枠を用意するほか、ユーロ圏16カ国が4400億ユーロの融資保証枠を設定します。また、IMFも2500億ユーロの融資保証を検討しているようです。これにより、総額7500億ユーロが、ユーロ圏加盟国の資金繰りのために用意されることになります。

5月10日の為替市場では、この報道によって、為替レートがレベルシフトし、いわゆる「窓明け」でスタートしました。たとえばドル円は、前週末に91.3円台で終わりましたが、今週開始時のレートは92.2円台となりました。ユーロ円は、116.4円台から119.1円台と一気に3円近く上昇しています。

様々な憶測・観測はあるようですが、市場の反応をみると、総額7500億ユーロのセーフティーネット(安全網)は、市場の動揺を抑えるのに(それなりに)有効だったといえます。ギリシャ支援に必要な資金は、悲観的な見方をしても、800億ユーロ程度と言われていますので、仮にギリシャのようなソブリンリスクが、ポルトガルやスペインといったPIIGS諸国に波及したとしても、7500億ユーロは、それなりに安心できる規模と思われます。

仮に今後も金融市場に動揺が広がるとすれば、欧州を中心とする金融機関が、資金繰りがつかずに破綻する場合でしょう。金融機関は、たとえ不良債権が多額にあったとしても、資金繰りさえつけば存続できます。逆に、どんなに優良な金融機関であっても、資金繰りがつかなければ金融機関は破綻します。おそらく世界中の金融当局者は、各国金融機関の資金繰りに繊細の注意を払い、少しでも資金繰りに支障が生ずるようであれば、ただちに手当てをする姿勢を採り続けるでしょう。そうすることで、2008年秋に起きたような世界的な金融危機を防止しようとしているはずです。

今回のギリシャ危機が、2008年秋と違う点は、ターゲットとなっている組織が金融機関ではなく、(ギリシャ)政府にある点です。金融機関の場合、表からは見えない不良債権を抱えているリスクがありますが、政府の場合、財政状況が(ある程度)透明です。また、政府の金の使い道は、資産運用ではなく、国民への財・サービスの給付なので、使い過ぎによる資金の枯渇、はあっても、運用の失敗による予想外の損失を抱えることはありません。つまり、補填しなければならない額が、(調査を通じて)ある程度確定できるので、補填スキームの実効性が高まれば、市場の動揺は収まり、各国金融機関の資金繰りも正常化すると思われます。

ギリシャ危機が生じた本質的な原因は、通貨や政策金利が統一化されているのに、ユーロ加盟各国が自らの裁量で債券(国債)を発行し、議会を通じて自らの裁量で使い道を決めることができる点にあります。おそらく今後は、第二・第三のギリシャ危機を防ぐべく、ユーロ加盟国は、今まで以上に厳しい財政規律が求められるのでしょう。それは、財政基盤が弱いユーロ加盟国は、不況に対して、ケインズ経済学で示されるような景気対策が難しくなることを意味します。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 他消費財にも影響を及ぼすタバコの大幅値上げ

グローバル投資のポイント
19:00
2010/04/28

日本たばこ産業(JT)は、今年10月のタバコ税増税に伴い、タバコ1箱あたりの小売り価格を10月1日から110円~140円値上げすると発表しました。発表によると、代表的な銘柄である「マイルドセブン」は、1箱300円から410円に、「セブンスター」は300円から440円になります。

タバコ税の増税案では、1本あたり3.5円の増税が予定されていますので、単に増税分を上乗せするだけでしたら、1箱(20本入)の値上げ幅は70円となります。しかしJTは、増税によってタバコ需要の減少が見込まれるため、増税幅以上の値上げに踏み切ることを決めたようです。JTの発表によると、JTは、タバコ増税に伴い、国内タバコ販売は16%減少すると見込んでいます。

タバコは、16世紀後半に日本に伝来したとされており、江戸時代には庶民の嗜好品として普及しました。当時は、身近な楽しみが少なかったこともあり、タバコは生活での疲れを癒す憩いとされ、現在でも、タバコは庶民の嗜好品と位置づけられることが多いようです。

しかし、物価の観点で考えると、タバコは、もはや「庶民」の嗜好品といえなくなりつつあります。総務省の消費者物価指数によると、タバコ(セブンスター)の消費者物価指数は、109.4(2005年平均=100、2010年2月)となっています。調査対象品目すべての消費者物価(総合)は、99.3(同)ですので、タバコの物価は、全体に比べ10%以上も上昇したことになります。

今年10月よりセブンスターの価格は46.7%も上昇(=440円÷300円)しますので、タバコの消費者物価指数は160.5になります。つまり、2005年からみて、タバコの物価は6割も値上がりすることになります。これだけ物価が上昇すれば、タバコを購入する方は、タバコを購入しない方に比べ、より多くの支出を強いられるか、他品目に対する支出を控える必要があるといえます。

デフレ状態が続いている日本において、タバコを吸い続けることは、健康だけでなく、消費状況にも影響を及ぼすといえそうです。小さいことのように思われるかもしれませんが、タバコの物価上昇による消費の変化は、単にJTの収益を下押しするだけでなく、他消費財企業の収益にも変化を促すように思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ ネットによって価格が非連続に引き下げられた英会話学校業界

グローバル投資のポイント
19:00
2010/04/22

4月20日、英会話学校大手のジオスは、東京地裁へ取締役及び従業員による準自己破産を申請し、同日、保全管理命令を受けました。保全管理人によると、ジオスの負債総額は、2010年3月末現在で約75億円とのことです。

ジオスは、1973年3月創業し、86年12月に法人化された英会話学校の大手です。過去にはテレビコマーシャルを積極的に展開していたので、「ジオス」という名を聞いたことがある方は多いと思います。ジオスは、地方都市にグループ会社を設立する形で全国展開を図るだけでなく、海外にも直営校を開設することで、1995年3月期には売上高を166億円まで拡大させた実績があります。

しかしその後、ジオスの経営環境は悪化します。報道によると、ジオスは、2008年9月にリストラプランを策定し、国内のスクール数を約420校から約320校に減らしたほか、取引金融機関に返済条件変更の同意を取り付けるといった各種リストラ策を実施しましたが、リストラに伴う費用負担や、スクール閉鎖に伴う生徒への返金などが予想を上回り、資金繰りの悪化を招いたとされています。また、2009年12月には、オーストラリアで英会話スクールを運営していた子会社が、資金繰りの悪化からオーストラリア政府よりビザ発給の認可停止を受け、2010年2月には現地の英会話学校を閉鎖する事態となっていました。

2007年10月に業界最大手のNOVAが経営破たんしただけでなく、大手のジオスも(事実上の)経営破たんとなった背景に、英会話学校業界の環境変化があります。マスコミ報道では、経営環境が悪化した理由として、企業が語学研修への支出を減らしたことが指摘されています。経済産業省の大手中心の調査によると、2006年2月に82.7万人いた語学教室の受講生は、2010年2月には33.6万人にまで減少しています。ここまで受講生が減少してしまえば、固定費が高くなりがちな大手企業ほど経営が難しくなります。

英会話学校の市場規模が縮小している理由は、企業による研修支出の減少といった景気要因だけでなく、少子高齢化による若年層の減少や、ネットを駆使した低コストサービスの普及といった構造的な要因も考えられます。たとえば、Smart.fmという英語学習用のサイトを利用すれば、英会話学校に多額の費用を支払うことなく、無料で英会話を学ぶことができます。

英会話を学ぶ上で、ネイティブスピーカーと対面で会話をすることの重要性を否定するつもりはありません。しかし、一般的に消費者は、財・サービスを購買する上で費用対効果を考慮します。ネットを駆使した低コストの英会話学習サービスが、消費者により低い価格でサービスを提供している以上、英会話学校における一般価格は、非連続で低下したと考えるべきです。既存の形式でサービスを提供する英会話学校は、たとえ良質なサービスを提供しているとしても、これまでと同じ価格水準で経営を続ければ、いずれジオスと同じような状況になるといえます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 主張が空回りしかねない経済指標の使い方とは

グローバル投資のポイント
18:00
2010/04/16

4月16日付の日本経済新聞は、総務省の労働力調査から失業の長期化が鮮明になってきたと報じています。2009年の完全失業者336万人のうち、失業期間が3カ月以上の失業者は214万人と、完全失業者の約28%を占めています。

新聞記事では、失業期間の長期化が目立つのは若年層、と指摘しています。3カ月以上の失業者を年齢別にみると、25~34歳は前年比36%増、15~24歳は同比35%増、と増加幅が大きいことを記事では示しています。

若年層の失業期間が長いことは、失業している方だけでなく社会的にも損失が大きくなります。一般に若年時代には、仕事を通じて様々な知識・経験を習得し、中年以降の活躍の基盤を構築するのが望ましいとされています。若年層の失業期間が長期化することは、個々人の知識・経験を習得する機会を失う可能性があるため、個々人の能力だけでなく、国全体の労働力の質向上が停滞することも考えられます。

ただ、労働力調査のデータを眺めると、若年層の失業期間だけが長期化しているわけではないことがわかります。たとえば各年代における3カ月以上の失業者の割合をみると、25~34歳では約67%ですが、35~44歳でも約66%と大差がありません。また15~24歳をみると、その割合は約58%と、他年代に比べ(むしろ)低い結果となっています。一般的に言われていることですが、15~24歳のような若い方であれば、職を得る機会は他年代に比べ多い、といえそうです。

新聞記事では、求職と求人がかみあわない「ミスマッチ」が若年層で深刻だと指摘しています。おそらく記者は、ミスマッチの証拠として、若年層での失業期間の長期化を提示したかったのでしょう。しかし、先に指摘したように、失業期間の長期化という現象は、若年層に限ったことではありません。仮に、ミスマッチの深刻さを示したいのであれば、求人者数と求職者数を年代別に示した方が素直です。マスメディアとして、何らかの主張を記事に盛り込むことは結構なことですが、主張を裏づけするデータは、適切なものを選ぶ方が説得力が増すと思われます。

村田雅志(むらた・まさし)

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■ 知識の欠落を露呈した民主党デフレ議連による為替に関する要望案

グローバル投資のポイント
12:15
2010/04/14

民主党の有志議員による「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」(以下、デフレ議連)は、4月13日、今年夏の参院選のマニフェスト(政権公約)に反映させる要望案を議論しました。4月14日には、最終とりまとめ案を党の国会対策委員会などに提出する予定となっています。

報道によると、デフレ議連の要望案には、デフレからの完全脱却のために、金融政策と財政政策のあらゆる手段を一体的に駆使した総合デフレ対策が盛り込まれているようです。具体例として、政府が消費者物価指数の前年比2%超など物価水準目標を設定し、それに基づいて日本銀行が数値目標の達成に努めることや、金融政策の目標として「雇用の最大化(失業の最小化)」の明記することを要請しているようです。

政府が物価水準について目標を定めることなどは、政府と日本銀行の関係を再考を促すという点で、興味深い投げかけと思われます。ただ、残念なのは、デフレ議連の要望案の中には、経済学に関する知識が欠落した方が作成したと思われる内容も盛り込まれていることです。それは、為替政策に関する記述です。

報道によると、デフレ議連の要望案には、為替政策について、「貿易・金融に過度の歪みが生じないよう、購買力平価を参考として、1ドル=120円前後を目安に、相場が適切な水準を保つよう最大限の努力を行う」と盛り込まれているようです。

購買力平価とは、財やサービスが同じであれば、価格も同じとする「一物一価の法則」を前提とした考え方です。たとえば、米国と日本で全く同じ品質のリンゴが存在するとし、このリンゴは、米国で1個1ドル、日本で1個100円で販売されているとすると、一物一価が成立するのであれば、為替レート(ドル円レート)は、1ドル=1個=100円→1ドル=100円、となります。

購買力平価を用いて為替レートを推定する場合、ある特定の時期の為替レートを基点とし、その後の二国の物価それぞれの変化を基点に当てはめます。たとえば、基点とするドル円レートが100円だったとし、米国の物価は変わらず、日本の物価だけ2%低下したとすると、購買力平価説によって推定される為替レートは98円(100円から2%円高)となります。

ただ、購買力平価を用いて為替レートの水準を推定することは問題が多いことが知られています。問題の一つは、基点として使用する為替レートが、適切なものであるとは限らないことです。

書籍などでは、購買力平価からドル円レートを推定する場合、基点として1973年4-6月期のレート(1ドル265円)を用いることが多いようです。これは、1973年4-6月期の日米の経常収支がほぼ均衡し、貿易に関する政治的圧力も少ない時期とされているためといわれています。この方法でドル円レートを推定すると、(どの物価指標を使ったとしても)現在の為替レートよりも1割から3割程度、円安の結果となります。

しかし、たとえ経常収支が均衡していたとはいえ、今から40年近く前の為替レートを基点とし、物価変動だけで為替レートを推定するのは無理があります。たとえば、基点を1973年4-6月期ではなく、プラザ合意後の1985年以降にして、購買力平価を用いると、推定される為替レートは、現在の為替レートより円高水準となります。つまり、購買力平価で為替レートを推定しても、設定した基準しだいで、結果が大きく変わることになります。

購買力平価は「一物一価の法則」という直感的に理解しやすい理論をベースとしているだけに「正しそうだ」というイメージがあると思われます。しかし、購買力平価の本質を理解していれば、政策目標の設定方法として、購買力平価を利用することは不適切であることは自明です。

おそらく、デフレ議連が購買力平価という言葉を用いたのは、この内容を提案した方が、購買力平価の問題点を理解していないためでしょう。仮に、理解したうえで購買力平価とい言葉を用いたとすれば悪質です。この場合、現在のドル円レートよりも円安(1ドル=120円)にすべき、という主張をもっともらしくするために、もっともらしいイメージがある購買力平価を用いたと思われるからです。恣意的に結果を左右することができる方法(購買力平価)を用いて政策目標を提示するのであれば、目標の意味は全くなくなります。

村田雅志(むらた・まさし)

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■ 近々実施されるという人民元の切り上げ幅

グローバル投資のポイント
8:48
2010/04/12

近々、人民元が切り上げられるのではないか、との観測が浮上しています。4月8日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が、北京で形成されつつあるコンセンサスに詳しい関係筋の話として、中国の為替政策変更の発表が非常に近いと報じたほか、ガイトナー米財務長官が、8日午後に北京に入り、中国の王岐山副首相(金融担当)と会談したことも、人民元切り上げの真実味を増しているようです。

人民元の切り上げについては、欧米各国が以前から要望していたほか、中国にとっても、いずれは切り上げを実施しなければならないことでした。中国は、世界的な金融危機が生じた2008年7月から人民元の対ドルレートを一定にしてきましたが、そのために大量の元売り・ドル買い介入を実施しています。こうした為替介入により、中国には多額の人民元が市中に流入します。今年2月のマネーサプライ(M2)は、前年比25.5%増と高い伸びを示しています。

マネーサプライが拡大すれば、一般物価だけでなく資産価格も上昇しやすくなります。中国では、2月の消費者物価が前年比2.7%と伸びが加速しているほか、2月の住宅販売価格が前年比10.7%も上昇するなど、不動産価格も急騰している状況です。広い意味でのインフレは、国民の経済格差を広げやすくします。インフレを予防するべく、為替介入の規模を減らすこと、言い換えれば人民元の為替介入をやめること(≒切り上げ)は、安定的な内政を望む中国政府にとって必要不可欠といえます。

しかし、中国にとって人民元の切り上げは良いことばかりではありません。最大の問題は、中国が保有する米国債の価値が人民元建てで目減りすることでしょう。中国が保有する米国債(長期債)は、2010年1月時点で8890億ドル(1ドル94円換算で83兆5660億円)と世界一の規模となっています。仮に人民元を2%切り上げれば、それだけで約178億ドル(同1兆6713億円)もの価値を失うことになります。

中国としては、インフレを抑制したいが、そのために、これまで蓄積した富(米国債の価値)を大きく損なうことも避けたい、といったところでしょうか。そうした点を考えると、仮に中国政府が人民元を切り上げるとしても、切り上げ幅はせいぜい2%程度だと思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 持続性は期待できない米国の雇用増

グローバル投資のポイント
19:30
2010/04/05

4月2日に発表された米国の3月の非農業部門雇用者数は、前月比16.2万人増と、前月(2月)の1.4万人減から2カ月ぶりのプラスとなり、増加幅は、2007年3月の23.9万人以来、3年ぶりの大幅な増加となりました。

市場の事前予想では、3月の非農業部門雇用者数は、18万人程度の増加が見込まれていました。なぜなら今年(2010年)は、米国の国勢調査が実施されるため、調査関連の一時雇用が3月から発生することが見込まれていたからです。あくまで推測ですが、米国勢調査のための一時雇用者数は100万人近い、とも言われていますので、民間部門の雇用者数が減少したとしても、政府部門の雇用者数が大きく増加し、全体の数値を押し上げることになります。

市場関係者にとって意外だったのは、雇用が大きく増えるだろうと思われていた政府部門の雇用者数が3.9万人の増加(国勢調査を担当する連邦政府(除く郵便サービス)の雇用者数は5.13万人の増加)に過ぎなかったことです。一方で、大きく増加しないだろうと思われていた民間部門の雇用者数は、12.3万人も増加しました。

国勢調査による雇用増は、あくまで一時的なものです。このため、政府部門の雇用増が大きかったとしても、持続性の点で楽観できません。しかし、予想外に民間部門の雇用者数が増加したため、米国景気の先行きを楽観的に考える市場関係者も増えています。為替市場では、ドル円が94.7円台までドル買いが進み、米10年債利回りが3.95%と約10カ月ぶりの高い水準に上昇するなど、金融市場の反応は米国景気に対して(以前より)前向きになったといえます。

しかし、今回の結果をもとに、米国景気が回復を「続ける」と考えるのは、少し無理があるように思われます。失業者のうち永久解雇の対象となる労働者の割合は51.8%と、過去3度の景気後退局面よりも10%ポイント以上も高い水準です。仮に採用側(企業)が、雇用増を続けるつもりであるならば、永久解雇の対象者の割合は、せめて過去の不況期と同じ水準まで低下するはずです。

民間部門の雇用増のうち、建設業関連の増加が目立つのも気になります。2月は大雪の影響で、建設現場の工事がストップしたため、3月に納期の関係から建設業関連が一時的に雇用を増やした可能性もあります。こうした一時雇用者の雇用は、国勢調査の一時雇用者と同じように、今年夏場には再び失業する可能性があります。

どんな経済であっても、雇用が減少し続けることは無く、どこかで雇用の減少は止まります。米国の場合、2008年1月から雇用者の減少が始まりましたので、2年を経過して、ようやく雇用者の減少が止まった、程度に考えておくくらいの判断が妥当なように思えます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 本音では政府に配慮せざるをえないオーストラリアの金融政策

グローバル投資のポイント
15:00
2010/03/30

今週に入って豪ドルが堅調な値動きを見せています。昨日(3月29日)の豪ドル円は、一時、84.88円と今年1月15日以来の水準を回復しています。2月5日には76.17円の年初来安値をつけましたので、約2カ月で11%も上昇したことになります。

豪ドルが買われた理由の一つとして、来週の豪中央銀行理事会での利上げ期待があります。豪中央銀行(RBA)のスティーブンス総裁は、テレビ番組に出演し、性急な利上げは混乱を招くと述べながらも、不動産バブルを意識すると、早期の金利調整は適当と発言しています。豪ドルは、先進国の中では数少ない高金利国ですが、さらに利上げされれば、金利収入を目当てにオーストラリアへの資金流入が拡大し、あわせて豪ドルが買われる展開が期待できます。

スティーブンスRBA総裁が危惧するように、オーストラリアでは住宅価格の上昇が止まりません。やや古いデータですが、昨年12月の住宅価格(8大都市)は、3カ月前比5.2%上昇し、前年比では13.6%も上昇しています。

2008年に米国を中心に住宅バブルが崩壊したこともあり、RBAとしては、米国の二の舞を避けるべく、住宅価格の上昇に歯止めをかけたいところです。ただ、住宅価格上昇を抑制すべく利上げを続けるようだと、比較的堅調に推移しているオーストラリア景気が悪化する可能性が高まります。

RBAのデベル総裁補佐は、本日朝のシドニーでの講演で、オーストラリアの住宅ローン金利が政策金利より上昇しており、RBAは、こうした点を考慮に入れることができる、と発言しています。デベル総裁補佐の発言は、住宅ローン金利が上昇しているのだから、急いで利上げする必要はない、と解釈されます。こうした発言には、住宅バブルを防ぎたい一方で、景気への配慮も欠かせない、という思いが表れているといえます。

RBAが景気に配慮する理由として、オーストラリア政府への配慮を指摘する声もあります。オーストラリアでは、1年1カ月以内に総選挙が実施されることが予定されており、選挙間近に利上げによって景気が腰折れすることは、現政権としては避けたいところです。実際、オーストラリアの現政権は、住宅ローン金利の上昇に不快感を示しています。

建前として、本来であれば、中央銀行は政府から独立して金融政策を遂行すべきですが、どこの国であっても中央銀行は、政府の思惑を配慮して金融政策を実施するのかもしれません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 出口戦略の進展を非現実的に思わせる米CPIの結果

グローバル投資のポイント
13:52
2010/03/19

3月18日発表された米国2月の消費者物価指数(CPI)は、前月比0.0%(横ばい)となりました。米CPIの前月比がプラスでなくなったのは2009年3月以来11カ月ぶりのことです。原油価格の下落を背景にガソリンなどエネルギーが0.5%下落したことが指数全体の伸びを押し下げました。

一方、米CPIのうち、変動の激しいエネルギーと食品を除くコア指数は、前月比0.1%上昇と、2カ月ぶりのプラスとなりました。前月(1月)のコア指数の伸びは、約27年ぶりのマイナス(前月比0.1%低下)となりましたが、2月は持ち直したことになります。

ただ、コア指数を構成する内訳をみると、米CPIが持ち直したとは言い切れない気もします。コア指数の伸びを押し上げたのは、医薬(前月比0.5%上昇)や中古車(同0.7%上昇)でした。医薬は、制度的に引き上げられたためで、中古車が上昇したのは、消費者が新車から中古車にシフトしたためです(新車の伸びは同0.1%上昇)。

逆にコア指数の伸びを押し下げたのは、衣服(前月比0.7%低下)、航空運賃(同0.7%低下)、娯楽(同0.1%低下)などです。どの項目も景気に敏感に反応するものですから、今の米国経済は、改善していると言われている割には需要が弱いといえます。

3月18日の為替市場では、ドル円が90.80台まで上昇し、ユーロドルが1.36台を割り込むなど、小幅でしたがドルが買われる場面がありました。米FRBが公定歩合を再度引き上げる、という噂が市場に流れたためと思われます。

しかし、景気に敏感な項目を中心に米CPIの伸びが抑制されている状況で、一種の金融引き締めに該当する公定歩合の引き上げが実施されるとは思えません。過去に例を見ない規模でFRBのバランスシートを膨張させ、大量の資金を供給したことにFRBが危機感を持つのは理解しますが、景気の現状を無視して出口戦略を進めるのは現実的とは思えません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 奇策でしかない外為特会を使ったマニフェスト財源探し

グローバル投資のポイント
8:49
2010/03/17

3月16日付の日本経済新聞は、菅直人副総理・財務相が、外貨準備を運用する外国為替資金特別会計(外為特会)の積立金のあり方を見直すよう財務省の事務方に指示していたことが分かったと報じています。報道によると、菅氏は、20兆円近い外為特会の積立金の一部を取り崩し、「埋蔵金」としてマニフェスト実現の財源に充てる狙いがある、とされています。

ただ菅氏は、閣議後の会見で日本経済新聞の報道を否定し、「特別会計全体の見直しについて、一般的な指示は出したが、個別に外為特会ということで、積立金から財源を出すという趣旨での指示はしたことはない」とコメントしています。

外為特会とは、為替介入に関連する資金の流れを管理する国の特別会計のことで、国の一般会計と区別されています。外為特会が保有する資金は、2009年3月末に132兆7440億円に達しており、マニフェスト実現のための財源を探している現政権にとって、一見魅力的な資金源のように思えます。

しかし外為特会は、為替介入のために設けられているものであり、外為特会が保有する資金の多くが外貨や外貨建ての国債です。よって、仮に現政権が外為特会が保有する資金をマニフェストのための財源に使おうとするならば、外貨を円に換える必要があります。

現政権が財源として使う資金の規模にもよりますが、仮に数兆円規模を外貨から円に換えようとしたら、それだけで円高が進んでしまいます。菅財務相が就任直後に円安を望むような発言をしたくらいですから、たとえマニフェスト実現のためとはいえ、円高になるようなことは選択しないでしょう。

また、2008年後半以降のドル安(円高)の進展で、外為特会のドル建て資産には多額の為替評価損が発生していると言われています。現在の為替水準でも、積立金から評価損を差し引くと、積立金は5~6兆円程度のマイナスとみられており、マニフェスト実現のための財源として積立金を使ってしまうと、一般会計だけでなく外為特会も財務状況が悪化します。

外為特会が、過去の為替介入の結果、132兆円もの資産を有するほど膨張したのは、行政の効率化という点で問題視されるべきでしょう。しかし、外為特会の規模を縮小させることは、マニフェストの財源確保とは別問題です。外為特会を使って財源を確保しよう、という考え方は、二つの問題を一気に解決させよう、とする奇策のようにみえます。ただ、奇策は、あくまでも奇策でしかなく、成功する可能性は低いものです。

外為特会のあり方については、現政権だけでなく自民党を始めとする野党内でも見解が多岐に分かれています。日本経済新聞の報道は、菅氏の本意ではないのかもしれませんが、他政治家の考えが反映されたものなのかもしれません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 外資系企業の呼び込みに使うべき政府の資金拠出

グローバル投資のポイント
18:43
2010/03/10

3月10日付の日本経済新聞一面には、「有力外資 相次ぎ日本撤退」という印象的な見出しの記事が掲載されています。また、少し小さな見出しですが、「先端研究助成 1000億円の配分公表」という見出しの記事も掲載されています。

「有力外資 相次ぎ日本撤退」の記事には、日本での生産や販売から撤退した外資系企業の例が数多く紹介されています。たとえば、タイヤ生産大手の仏ミシュランは、7月に太田工場を閉鎖するそうです。また韓国の現代自動車の日本法人は、日本での乗用車の新車販売を中止しています。

一方、「先端研究助成 1000億円の配分公表」の記事では、1000億円の先端研究助成基金について30人の研究者に配分する金額が公表されたことが報じられています。新型万能細胞(iPS細胞)で有名な山中教授らに50億円が配分されたほか、ノーベル化学賞を受賞した田中氏には34億円が配分されたそうです。

先端研究助成基金は、麻生政権時代に発足したもので、現政権になってから、当初の半額規模で2009年度補正予算に盛り込まれたものです。「基金」の名前がついていますが、これは使い切れなかった費用を翌年度以降に繰り越すことを可能にするために「基金」というハコを用意しているだけで、仕組みの本質は政府が研究者に助成金を支払うことといえます。

1000億円の助成金と聞くと、それなりにすごい規模のように思えますが、先にご紹介した外資系企業の撤退のほうが金額インパクトは大きいです。たとえば、太田工場を閉鎖する仏ミシュランは、約760億円をかけてインド南部に工場を建設します。また現代自動車は、約704億円をかけて北京に工場を新設する予定です。この2つだけで1400億円の資金が投じられることになります。

外資系企業にとっては、人口減少を背景に低成長に甘んじる日本よりも、インドや中国といった成長が期待できる新興国に資金を投じた方が効果的と判断するのは自然のことです。しかし、単に自然のままに任せていたら、日本経済は、ますます弱体化します。

おそらく先端研究助成基金は、日本経済の弱体化を防ぐべく、先端研究を活性化させることを目的に設立されたのでしょう。しかし残念ながら、政府が多額の資金を投じたとしても、世界各国の企業が投ずる資金規模には勝てません。

国・地方の長期債務残高がGDP比171%(825兆円)まで拡大していることを考えたら、より効果の高いことに資金を投ずる姿勢が求められます。一般的に政府は、民間企業に比べ業務効率が低いと言われています。政府は、自らが資金を拠出するよりも、世界各国の企業が日本に資金を投じたくなるよう環境整備や規制緩和に資金を投じることにもっと注意を払うべきだと思います。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 日本企業の対応能力の低さを示した雇用の意識調査

グローバル投資のポイント
18:03
2010/03/04

帝国データバンクが発表した「雇用動向に関する企業の意識調査」によると、2010年度の正社員採用について、「予定なし」と回答した企業は、47.5%(10,624社中5,050社)と前年度調査から1.6ポイント上昇し、調査を開始した05年度以降で最高を記録しました。ました。また、非正社員の採用については、「予定なし」が57.0%(同6,056社)と、前年度調査から1.6%ポイント低下していますが、高止まりしています。

正社員であろうと、非正社員であろうと、社員の採用予定のない企業の割合が半数程度占めていることは、それだけ日本企業の雇用過剰感が強いことを意味します。鉱工業生産などをみると日本景気の回復は続いているといえますが、全産業・全規模の売上高(09年10-12月期)は、前年同期比3.1%減と前年割れが続いています。売上高の減少が続いている以上、雇用を拡大させようとしないのは、企業経営者にとっては(短期的には)自然のことといえます。

興味深いのは、雇用調整方法として回答割合が多かったのが、中途採用や新卒者採用の削減・中止が回答割合が高かった(回答割合ランキングの1位と2位になった)ことです。雇用調整には、残業規制や非正社員の再契約中止(いわゆる雇い止め)が一般的のように思われていますが、実際には、(中途・新卒を問わず)新規採用を止め、既存従業員の雇用確保を優先する傾向が強いようです。

おそらく、日本企業の多くは、景気回復は今後も続くので、売上の拡大ペースは鈍くても、いずれ以前と同じ水準の仕事量を確保することができ、以前と同じ仕事をするのであれば既存の従業員を確保した方が合理的と考えているのでしょう。しかし、世界の消費大国であった米国の消費拡大ペースが鈍化するなど世界全体の経済構造が変わりつつある中、輸出によって仕事を確保していた製造業の全ての企業が、以前と同じ水準の仕事量を確保できるとは思えません。既存従業員の雇用確保を優先するがあまり、企業全体の環境対応が遅くなり、結果的に(製造業を中心に)企業収益の悪化が長期化することが懸念されます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ デフレ圧力の長期化を意味する完全失業率の低下

グローバル投資のポイント
13:57
2010/03/02

1月の完全失業率は、4.9%となり、昨年12月(5.2%)から0.3%ポイント低下しました。完全失業率が4%台になるのは、昨年3月以来10カ月ぶりのことです。市場関係者による事前調査では、1月の完全失業率は5.2%前後が予想されていましたので、結果は予想以上に良かったといえます。

1月に完全失業率が大きく低下したのは、完全失業者の数が減っただけでなく、労働力人口が大きく増加したためです。完全失業率とは、労働力人口に占める完全失業者の割合を示したものですので、完全失業率の分子にあたる完全失業者が減るだけでなく、分母である労働力人口が増加しても完全失業率は低下します。

1月の労働力人口は、昨年12月から43万人も増えています。昨年(2009年)に労働力人口は65万人減少していますので、わずか1カ月で昨年の減少分の3分の2を取り戻したことになります。

過去の歴史を見ると、景気が悪化すると、労働力人口は減少する傾向にあります。労働力人口は、職の有無にかかわらず仕事をする意欲がある方の総計ですが、景気悪化により職探しをあきらめる(仕事をする意欲を失う)方が増え、労働力人口は減少します。

一方、景気回復の初期には労働力人口が増加します。景気回復に伴い職を得られる機会が増えると考える方が増えるため、職探しを再開する方が増えるからです。ただ、景気回復の初期には、職探しを再開しても職が得られないことも多いので、労働量人口だけでなく完全失業者も増えます。よって景気回復の初期には、労働力人口が増えるだけでなく、完全失業率も上昇する傾向にあります。

興味深いのは、今回(今年1月)の結果は、労働力人口が増加する一方で、完全失業者が減少したことです。つまり、既存の失業者が職を得ただけでなく、職探しを再開した方も職を得たことになります。

雇用者数を産業別にみると、製造業が前月から11万人減少した一方で、卸小売業が前月から18万人、介護サービスなどの医療・福祉が14万人増えるなど、いわゆるサービス業の雇用が増えています。サービス業は、労働集約的な産業ですので、今後も卸小売や医療・福祉といった業種の雇用が増えることが期待されます。

前回の景気拡大期では、製造業が雇用の吸収源となりましたが、今回は卸小売や医療・福祉といったサービス業が、その役割を担うといえそうです。ただサービス業の一人あたり賃金は、製造業に比べ低いので、たとえ雇用が増え続けたとしても、前回の景気拡大期と比べて、日本全体で受け取る賃金(雇用者報酬)の伸びは低くなるでしょう。このため、個人消費の増加ペースも、前回景気拡大期よりも緩やかなものといえ、デフレ圧力も前回以上に長く残り続けることになります。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 利上げまでの時間稼ぎに過ぎない新興国の預金準備率引き上げ

グローバル投資のポイント
18:11
2010/03/01

BRICsと呼ばれる新興4国のうち3つの国が預金準備率を引き上げています。預金準備率とは、民間銀行が預金残高の一定割合を中央銀行に預け入れる比率のことです。預金準備率が引き上げられると、民間銀行がより多くの資金を中央銀行に預け入れることになるため、結果として銀行融資が縮小することが期待されます。

2月24日、ブラジル中央銀行は、定期預金に対する準備率を13.5%から15.0%に引き上げると発表しました。これにより、市中銀行から新たに710億レアル(約3.5兆円)の資金が吸収される見通しです。

翌日(25日)、中国の中央銀行である中国人民銀行は、1月に引き続き預金準備率を2カ月連続で引き上げています。今回の引き上げによって、約3千億元(約3.9兆円)の資金が吸収される見込みです。

2月27日、インドの中央銀行であるインド準備銀行は、預金準備率を5.50%から5.75%に引き上げています。インドの預金準備率は、2月13日に5.00%から5.50%に引き上げられたばかりですが、2週間後に再度、引き上げられたことになります。

ブラジル、中国、インドと、新興国の代表とされる3つの国で預金準備率が引き上げられたのは、各国ともにインフレ懸念が高まっているためです。たとえばブラジルの場合、1月の消費者物価は、前年同月比+4.59%と、政府のインフレ目標の中央値(4.5%)を上回っています。

一般に、インフレ率(物価上昇率)が高まるのは、市中で流通する資金量が拡大するためといわれています。このため、預金準備率を引き上げることで、銀行融資が縮小すれば、市中に流通する資金量も増えにくくなり、インフレ率が低下することが期待されます。

しかし、インフレ率を抑制するのであれば、預金準備率を引き上げるよりも金利を引き上げる(利上げをする)方が効果的です。預金準備率の引き上げは民間銀行のみに影響を及ぼすのに対し、利上げは民間銀行だけでなく消費者も含めたより広い経済主体に影響を与えるからです。

それにもかかわらず、ブラジル、インド、中国が、利上げではなく預金準備率の引き上げを選んだのは、利上げをすることで、自国通貨が上昇し、輸出競争力が低下する恐れがあるからでしょう。

2008年後半の金融危機以降、ドルの下落傾向は続いており、新興国通貨は以前に比べ対ドルで上昇しています。新興国としては、これ以上、自国通貨が上昇してしまうと、輸出競争力の低下を通じて、ようやく回復軌道に乗った景気が再び悪化してしまうため、自国通貨高につながりやすい利上げは避けたいのでしょう。

しかし、自国通貨高を恐れて利上げが遅れた結果、インフレ率の上昇が続いてしまったのも事実です。預金準備率の引き上げによるインフレ抑制効果が限定的なことも考えると、ブラジル、インド、中国は、いずれ利上げを選ばざるを得ず、結局、自国通貨高を受け入れるしかないような気がします。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 市場の期待が過剰だったに過ぎない米国消費の拡大期待

グローバル投資のポイント
15:08
2010/02/24

米大手民間調査機関コンファレンス・ボードが発表した2月の消費者信頼感指数は、46.0と、前月(1月)の56.5から大きく低下し、2009年4月以来(10カ月ぶり)の水準に落ち込みました。この結果、ドル円が90.70円台から一時89.90円台まで大きく下落し、ダウ工業株30種平均は前日比100ドル97セント安の1万0282ドル41セントで終えました。

米国の個人消費は、消費者マインドとの連動性が強いといわれています。米個人消費と消費者信頼感指数の過去の結果からラフに推測すると、今回の結果は、米個人消費の伸びがほぼゼロになることを示していますので、為替市場や株式市場の反応は、素直なものといえます。

1月の米・消費者物価指数(コア指数)の伸びが、1982年12月以来(約27年ぶり)の落ち込みを示したほか、失業率が10%近くであることも考えると、米国の個人消費が力強く回復するのは、やや難しいと考えた方が自然です。それでも、つい最近まで米国景気の回復期待が高まったのは、昨年10-12月期の実質GDPが、年率5.7%もの高成長を記録し、1月の米・小売売上高も前月比0.5%増と、予想以上に高い伸びを示したためでしょう。

しかし、GDPや小売売上高といったフローの経済指標は、歴史的な財政支出によって支えられている面が強く、財政支出の効果が切れれば、力強さを失うと考えるべきです。米国消費を支えるクレジットカードの残高(消費者信用残高)が、11カ月連続で減少しているように、金融機関が家計への貸出に慎重になっている姿勢に変わりはありません。

負債過剰感の高まりという構造要因がある以上、米国の家計が(金融機関の貸出姿勢にかかわらず)消費を拡大させることも期待できません。米国家計の住宅資産は、住宅価格の下落で6兆ドルも減少している一方で、負債(主に住宅ローン)は、ほとんど減少していません。これだけ大きな被害を被っている家計が、わずか1年程度で以前のように消費を拡大させると考えるのは無理があります。

おそらく今後の金融市場は、米国経済(特に個人消費)の回復ペースが緩慢であることを悲観するのでしょう。しかし、米国経済の回復ペースが急速に高まらないのは、以前から指摘されていたことです。市場の反応は、過剰な期待を修正する動きと考えるべきでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 世論が最大の敵になりかねないFRBの金融政策

グローバル投資のポイント
17:42
2010/02/22

2月18日、米連邦準備制度理事会(FRB)は、公定歩合を0.50%から0.75%に引き上げることを決めました。2008年後半の金融危機で導入した異例ともいえる金融緩和策の正常化(いわゆる出口戦略)に向けた対応とみていいでしょう。

FRBは、公定歩合の引き上げの声明文にて、「経済見通しの変更や金融引き締めを示すものではない」と記し、今回の対応が「利上げ」ではないことを強調しています。しかし、公定歩合は、金融政策を運営するツールの一つですから、公定歩合の引き上げは、広い意味での「利上げ」と考えるのが一般的です。

実際、公定歩合引き上げが発表されてから、金融市場は「利上げ」の反応を示しています。金融政策に敏感に反応するといわれる米国債(2年もの)の利回りは0.90%を超える水準に上昇し、ドル円レートは、一時92.10円と約1カ月ぶりの高値をつけました。公定歩合の引き上げが、政策金利(FF金利)の引き上げ(いわゆる利上げ)にすぐさまつながるかは定かではありませんが、公定歩合の引き上げが、利上げの地ならしである、と金融市場が先読みするのは自然のことと思われます。

公定歩合の引き上げについて、市場関係者の評価は、あまりよくないようです。FRBは公定歩合の引き上げを「利上げではない」と否定しましたが、米国債利回りは上昇してしまいました。米国債利回りが上昇してしまうと、銀行の貸出金利や住宅ローン金利も上昇することになるので、せっかく回復し始めた(と思われている)米国景気が再び悪化する可能性が高まります。

公定歩合の引き上げが、金利の上昇につながる可能性があることは、FRB自身も予想できたことと思われます。それでも、FRBが「あえて」公定歩合を引き上げたのは、現在の金融緩和が長期間続く、と予想(期待)されることを避けようとしたほか、すでに予兆が生じつつある過剰流動性を防ぐ意図があったためと思われます。

FRBの考えは理解できなくはありませんが、今回の公定歩合の引き上げは、ややタイミングが悪かったようです。公定歩合引き上げを発表した翌日(19日)、1月の米消費者物価指数が発表され、変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は、前月比0.1%の低下と、1982年12月以来(約27年ぶり)の落ち込みを示しました。

一般に、デフレ懸念が残っているうちは、(公定歩合であっても)金利を引き上げることは良くない、といわれています。現在の米国は、失業率が10%近くで高止まりしているなど、決していい状態とはいえません。こうした中、消費者物価が27年ぶりの落ち込みを示しているのにFRBは公定歩合を引き上げるとは何事だ!、といった批判の声は米国内で高まるでしょう。

この状況は、2000年に日本銀行がゼロ金利政策を解除した時と似ているように思えます。当時は、日本景気が後退局面に入ったこともあり、日本銀行は再びゼロ金利政策(実際には量的緩和政策)を選択した経緯があります。そして、その際に、日本銀行がゼロ金利を解除したことが景気後退のきっかけを作ったと非難されています。

今回のFRBの決断が、後世でどのような評価を受けるかは分かりませんが、このまま米金利が上昇を続けるようだと、FRBの立場は苦しくなり、以前の日本銀行と同じように世論で行動が縛られるリスクが高まるような気がします。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 人民元切り上げへの準備を意味する中国の米国債取り崩し

グローバル投資のポイント
17:33
2010/02/17

2009年12月の米・国際資本統計によると、日本が保有する米国債残高は、7668億ドルと前月(11月)から115億ドル増え、中国を抜いて世界一となりました。一方、中国の米国債保有残高は、7554億ドルと前月より342億ドルも減少しています。中国の米国債保有高は、2008年9月に日本を抜き世界最大となり、2009年5月には8015億ドルまで拡大させました。しかし、その後、中国は米国債の保有高を減らしています。

中国が米国債保有高を増やしてきた背景に、為替市場への介入があります。中国は、人民元の対ドル相場を維持するため、元売り・ドル買い介入を大規模に実施し続けています。中国は、こうした介入によって、多額のドルを保有することになり、運用手段として米国債の保有を増やしてきました。

現時点でも人民元の対ドルレートは固定されており、中国が元売り・ドル買い介入を放棄したわけではなさそうです。元売り・ドル買い介入の規模と連動すると考えられる外貨準備をみると、中国の外貨準備は依然として拡大を続けています(10月:2兆3283億ドル、11月:2兆3888億ドル、12月:2兆3992億ドル)。それにもかかわらず中国が米国債の保有高を減らしたのは、なんらかの理由があると考えるべきでしょう。

その理由として、マスメディアなどでは、中国と米国の政治的な対立を指摘しています。人民元の切り上げ要求、Googleの検閲問題や、台湾への武器輸出など、最近になって中国と米国との間に軋轢が目立つようになってきました。こうした軋轢への対応策として、中国は米国債の保有高を減らした、という見方です。

米国政府としては、歴史的な規模で米国債を発行している以上、スムーズかつ低金利で米国債を消化させたいはずです。世界一米国債を保有してくれた中国が米国債を取り崩すことは、米国政府に大きなプレッシャーをかけることになります。

こうした考え方を否定するつもりはありませんが、個人的には、中国は、いずれくるであろう人民元の切り上げに備えるために、米国債の保有を減らしたのではないかと考えています。現在のところ中国は人民元の対ドルレートを固定していますが、レートの固定化をはずせば、おそらく人民元高・ドル安が進むでしょう。ドル安が進めば、ドル建てである米国債の価値は、元建てで見た場合、目減りします。

ドル安による米国債の目減りを防ぐ唯一の方法は、米国債の保有高を減らすことです。おそらく、これまでは、中国が米国債の保有高を減らすと、米国の長期金利に上昇圧力が高まり、結果的に米国経済の悪化につながると判断したと思われます。しかし、金融危機も収束し、米国経済も安定してきましたので、米国債の保有高を減らしても大丈夫だろう、と判断を変えたと思われます。

仮にこの考えが正しいとすれば、今後も(徐々にではあっても)中国は米国債の保有高を減らし続けることになります。中国の代わりに米国債の受け皿になるのは、中国に代わって世界一となった日本や英国、産油国などでしょう。

日本などが米国債の保有を渋ると、米国の長期金利に上昇圧力がかかり、ドル高(円安)が進みやすくなるかもしれません。日本経済にとって、ドル高(円安)は輸出の拡大を促すので、都合の悪いことではありません。しかし、この場合、米国政府が日本に対して、いろいろと圧力をかけることになるのでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 今年度のゼロ成長予想を示したエコノミストの見通し

グローバル投資のポイント
10:53
2010/02/16

2月15日に発表された昨年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比年率4.6%増と、3四半期連続のプラスとなりました。名目GDPも同比0.9%増と7四半期ぶりのプラスとなり、ようやく日本景気の回復もしっかりしてきたといえます。

GDPの伸びを項目別にみると、個人消費が前期比0.7%増と、3四半期連続のプラスとなったほか、設備投資が同比1.0%増と、7四半期ぶりのプラスとなりました。この結果、内需寄与度(GDPの伸びのうち内需が押し上げた貢献度を示す値)は、プラス0.6%と、外需寄与度(プラス0.5%)を上回る強さとなりました。

実質GDPが発表された翌日(2月16日)の日本経済新聞では、民間エコノミストによる日本景気の見通しがまとめられています。今年度(2010年度)の実質GDP成長率見通しは、エコノミストの間でバラつきがみられるものの、平均すると1.6%増の予想となっています。機械的に考えれば、エコノミストの多くは、今年度の日本景気は「プラス成長」を見込んでいる、といえます。

しかし、これはあくまで表面的な解釈であり、じつは、エコノミストの多くは、今年度の成長を「プラス成長」というよりも「(ほぼ)ゼロ成長」と見込んでいる、のが正確な解釈です。それは、今年1-3月期の実質成長率が、前期比年率で1.3%程度の増加が見込まれており、この通りの結果となると、今年度はプラスの「ゲタ」を履くことになるからです。

ゲタとは、ある一定期間の平均値に対する一定期間の最後の水準の伸び率です。たとえば、昨年度の平均値が100で、昨年度末(1-3月期)の値が110の場合、ゲタはプラス10%(=110%-100%)となります。ただ、こうした考え方はわかりにくいので、新聞などでは、ゲタのことを「発射台」と表現したり、「当初から水準が変わらなかった場合の伸び率」などと表現することもあります。簡単に書けば、ゲタがプラスのときは、年度の伸び率は高めになりやすい、といえます。

日本経済新聞にまとめられたエコノミストの見通しによると、今年1-3月期の実質成長率は、前期比年率で1.3%程度の増加が見込まれています。この場合、今年度のゲタは、プラス1.3%となります。エコノミストによる今年度の成長率見通しが平均で1.6%増ですから、ゲタによる押し上げ効果を取り除いた実質GDPの伸び(今年4月から来年3月の実質GDPの伸び)は、わずか0.3%増に過ぎないことを意味します。

エコノミストたちが、ここまで悲観的な見通しを示す理由は数多くあります。輸出は、2008年の金融危機の後、それなりに回復しましたが、欧米ともに景気の大幅回復は見込みにくく、中国を中心とした新興国頼みでは、今後の伸びも限定的と考えられます。

昨年10-12月期の成長率を押し上げた個人消費や設備投資も、大きな期待ができません。個人消費の拡大は、エコポイントなどに代表される景気対策によるもので、追加的な景気対策がなければ、伸びは難しいでしょう。設備投資も、設備過剰感が高止まりしていることもあり、企業が設備投資を大幅に拡大するとも思えません。

こうした点を考えると、人々が感じる景況感は、さほど改善しないことが予想されます。おそらく、多くの人々が景気回復を実感するためには、今年度の実質成長率が3%近くに高まることが必要でしょう。それは、かなりハードルの高い数値といえます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ ドル安の流れを後押しするオバマ大統領の一般教書演説

グローバル投資のポイント
11:58
2010/02/02

オバマ米大統領は、日本時間1月28日に就任後初めての一般教書演説を行い、政権二年目の内政、外交政策の指針を明らかにしました。ただ、演説において外交・安全保障に関する内容はほとんどなく、演説全体の3分の2が経済政策に関するものでした。1月19日にマサチューセッツ州での連邦議会上院補選で民主党候補が敗北したことで、オバマ政権としては、経済問題の克服を目指す姿勢を強く示す必要があったということでしょう。

今回の一般教書演説で興味深いのは、米国の輸出を5年間で2倍にする計画を示したことです。一般教書演説では、「今夜われわれは新たな目標を打ち立てたい(So tonight, we set a new goal)」とした後で、「次の5年間で我々(米国)の輸出を2倍にし、米国内200万人の雇用を支える(We will double our exports over the next five years, an increase that will support two million jobs in America.)」としています。非常に明確な目標です。

輸出を5年間で2倍にするには、輸出を毎年15%ずつ増やしていく必要があります。世界経済が拡大を続けた2004年から2008年の間、米国の輸出の伸びは二桁を維持したものの、13%程度でした。中国を除く各国の景気回復ペースは鈍いことも考えれば、これから米国が輸出を毎年15%ずつ増やしていくのは、それほど簡単なことではありません。

米国が輸出を増やそうとするのであれば、日本や中国に対して「市場開放」を求めてくるのは自然です。すでに米国政府は、環境対応車(エコカー)に対する補助制度の対象に、型式指定制度(日本が補助対象の認定に使う制度)を取得していない米国車を加えることを要請し、日本政府は了承しています。また米通商代表部(USTR)のマランティス次席代表は、1日に来日し、自動車のほか保険市場や牛肉問題などについて、日本政府関係者と協議する予定にあります。

一般教書演説にて、具体的な数値をあげて輸出の拡大を目標としている以上、今後も米国政府は輸出拡大のための動きを活発化させるでしょう。その一環として、ドル安を志向することも十分考えられます。特に今後の有望市場であるアジア各国でのドル安(アジア通貨高)は、米国政府の目標達成にとって好都合です。

為替市場の動きは、政府が決めるものではなく、あくまで市場参加者の思惑に左右されるものです。しかし、米国政府が間接的とはいえ「ドル安が好都合」というメッセージを出したことは、市場参加者に大きな影響を及ぼすといえそうです。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 思いだけでは続かないことを示した独立系の直販投資信託会社3社の合併

グローバル投資のポイント
9:44
2010/02/01

一部報道等によると、独立系の直販投資信託会社3社が合併に向けて最終調整に入ったようです。合併を協議しているのは、浪花おふくろ投信、かいたく投信、楽知ん投信の3社で、3社は2月上旬に開く臨時株主総会で正式決定し、4月1日付で合併する予定です。新社名は「クローバー・アセットマネジメント株式会社」となり、合併後も各社が運用する投信は、そのまま存続する予定です。合併によって、システムの統合など基幹業務のスリム化を期待しているようです。

浪花おふくろ投信などの上記3社は、さわかみ投信の沢上篤人社長の支援を受けて、2006年3月から2007年2月に設立されました。3社に共通しているのは、日本の個人投資家の財産形成を手助けするべく、長期保有を前提とした投資信託を提供することを標榜していることです。3社が運用する投信(ファンド)は、さわかみ投信が運用する「さわかみファンド」や、海外を投資対象とした私募ファンドも運用対象に組み入れることで分散効果を狙うファンド・オブ・ファンズ形式となっています。

ただ、3社の投信の純資産総額は、いずれも3億円台と非常に小さい規模になっています。投信会社の収益は、純資産総額に一定の料率(信託報酬)を乗ずることで決まりますが、3社が適用する料率は、1%弱ですので、各社が得られる収益は、理論上、年間3百万円(=3億円×1%)となります。これでは、(少数とはいえ)それなりのスキルを要した人員で業務を遂行する投信ビジネスを、持続的に営業することは難しいです。

3社が運用する投信の純資産が伸び悩んでいる理由の一つは、投資家が負担する「実質的な」コストが割高なためと思われます。各社とも、営業収益として計上される信託報酬の比率は、1%未満に抑えていますが、彼らの投信はファンド・オブ・ファンズ形式となっており、投資家は、投信会社だけでなく、投資対象となるファンドにもコスト(信託報酬)を支払う必要があります。この結果、3社のファンドとも、投資家が支払うべき「実質的な」信託報酬は、1.6%程度となっています。3社の設立に尽力された沢上篤人社長が運営する「さわかみファンド」の場合、信託報酬の比率は1.05%ですので、3社が運営するファンドの価格競争力は低いといえます。

ETFの普及も、3社のビジネス拡大を阻害している気がします。最近では、外国株指数と連動するETFが、東証や大証で上場されており、こうしたETFを購入することで、分散効果を得ることも可能となっています。こうしたETFの信託報酬は、0.3%~1%程度ですので、運用コストに敏感な投資家は、信託報酬1.6%の3社の投信を購入せず、ETFを組み合わせることになります。

皮肉なことですが、ある新聞は、独立系の直販投資信託会社3社の合併に関する記事の真下に、みずほ投信投資顧問がETF事業に新規参入するとの記事を掲載しています。この記事によると、みずほ投信は、2月15日に大阪証券取引所に金先物価格に連動するETFを上場するそうです。このETFの信託報酬は0.47%で、3万円前後で売買できる予定です。

おそらく今後も、商品や外国株指数と連動するETFが上場し、個人投資家は、分散効果を狙った投資の利便性が高まるでしょう。こうなると、分散効果を狙った投信の意義は、相対的に低下することになります。

個人投資家のために、日本に新しい投資環境を提供すべくスタートした独立系の直販投資信託会社3社の意気込みは評価されるべきでしょうが、継続的にビジネスを続けられないのでは、結局、資金を投じてくれた個人投資家に迷惑をかけることになります。合併する3社には忸怩たる思いもあるでしょうが、合併後も設立当初の思いを忘れずに、個人投資家のために活動を続けていただきたいと希望しています。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 慰めにすらならない「一人あたり」の経済水準の高さ

グローバル投資のポイント
19:40
2010/01/21

1月21日に発表された中国の09年の名目GDPは、33兆5353億元(約460兆円)と、前年(08年)から11.5%増加しました。日本の09年の名目GDPは、まだ発表されていませんが、470兆円を少し上回る程度と思われます。つまり、09年時点で日本と中国の名目GDP差は、10兆円程度といえます。

2010年の日本の名目経済成長率は、デフレの影響もあって、±ゼロ%程度を見込むのがせいぜいで、楽観的に考えても1%に迫ることは考えにくいでしょう。このため、2010年の日本の名目GDPは、470兆円前後が見込まれます。一方、中国は、インフレ懸念があるくらいですし、中国政府による巨額の景気対策の恩恵もあり、少なく見積もっても10%程度の伸びは確保しそうです。よって、2010年の中国の名目GDPは、506兆円(=460×110%)が見込まれます。つまり、2010年には、中国の名目GDPは、日本のそれを上回ることになり、中国が世界第二位の経済大国となるわけです。

2010年には、中国の名目GDPが日本を上回る可能性があることは、2008年くらいから、すでに指摘されていたことでした。日本と中国の成長率格差やインフレ格差を考えれば、こうした見通しは、特に異論があるわけでもなく、2009年の結果をもって2010年の見通しを考えたところで、それは過去の見通しとなんら変わることがない、特に興味深いものではありません。

しかし、新聞を中心とするマスメディアは、2009年の名目GDP2010年には中国が日本を抜き、世界第二位の経済大国になる、という(確度の高い)予想を大きく取り上げています。日本の名目GDPが世界第二位になったのは1968年、今から42年前のことですから、日本に住む多くの方にとって、「日本が世界第二位の経済大国」というのは、変わりようがない事実、だからかもしれません。

興味深いのは、マスメディアの中には、2010年には中国が世界第二位の経済大国になる、という事実を報じる一方で、中国の一人あたり名目GDPは、日本の10%未満で、生活水準は、(まだまだ)日本の方が高い、といった内容も報じていることです。中国は日本の10倍以上の人口を有しているのですから、中国の名目GDPが、日本を追い抜いたとしても、一人あたり名目GDPが日本を大きく下回るのは、ちょっと考えれば分かることです。

こうした記事を目にするたびに懸念されることは、日本の経済成長が鈍化していることもあって、経済水準の評価を国全体ではなく一人あたりの尺度で考えようとする風潮がでてきたことです。日本は少子高齢化で人口減少が確実視されているから、経済水準を国全体で評価せず、一人あたりで考えたほうが公平だ、ということかもしれません。

ただ、規模の経済、という言葉があるように、一人あたりの経済水準は、一国全体の経済活動がもとになって事後的に決まるものです。一人あたりの経済水準で他国を上回ったところで、一国全体の経済水準が低い場合、経済大国のやり方を続けていれば、いずれ一人あたりの経済水準も相対的に低下するでしょう。

一国全体の経済水準が小さくても一人あたりの経済水準が高い国は、原油など天然資源に恵まれていたり、税制などを駆使して特定産業の活性化を図るなど、経済大国とは違う経済政策を実施しています。仮に日本が、国全体の経済水準ではなく、一人あたりの経済水準を政策目標にするならば、日本も経済「小国」として、他国を参考に経済政策を劇的に変更する必要があるでしょう。しかし、残念ながら、現在の日本の状況をみると、こうした劇的な変更は期待できません。このため、一人あたりの経済水準をターゲットとすることが懸念されるのです。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 善悪の問題ではない百貨店閉店数の増加

グローバル投資のポイント
17:52
2010/01/20

1月20日付の日本経済新聞は、「百貨店閉鎖 最悪に迫る」という見出しとともに、今年閉鎖される百貨店の数が8店に達していることを報じています。記事によれば、今年の閉鎖が決まっている百貨店は、丸井今井室蘭店、松坂屋岡崎店のほか、伊勢丹、北陸地方の大和、福島市の中合の計8店だそうです。

年間でもっとも閉店が多かったのは、経営破たんした「そごう」が東京店など9店を閉めた2000年で、その時は11店が閉店となりました。今年(2010年)は、すでに計画されている8店に加え、松坂屋が名古屋店を閉鎖することが検討されており、もしかしたら2000年の閉店数(11店)を上回るかもしれません。

しかし、百貨店の店舗数は、1999年の311店をピークに、毎年3~5店のペースで減少しています。しかも、現在のように景気が低迷し、デフレによって販売価格が弱含んでいる状況では、百貨店の閉店ペースが加速するのも不思議ではありません。

百貨店業界の方々には厳しい物言いになるかもしれませんが、特定の商品カテゴリーにおいて、豊富な品揃えを低価格で提供するカテゴリーキラーが、消費者ニーズをつかんでいる状況で、カテゴリー数は多いものの、品揃えはさほど多くなく、販売価格も比較的高めの百貨店が閉店を迫られるのは自然のことと思われます。

百貨店の店舗数が減少している、という事実に、あまり目新しいものはありませんが、新聞の見出しに「最悪」という表現があるのは興味深いことです。百貨店の閉店数が増えることは、百貨店に勤める方にとって職場の減少を意味するので「最悪」かもしれませんが、カテゴリーキラーにとっては、閉店後の跡地への出店チャンスが増えるため、「最良」といえるかもしれません。

百貨店業界に関係する業種も多いので、百貨店の閉店数が増えることは悪いことだ、と思われるかもしれませんが、そのような状況を招いたのは消費者です。仮に、消費者が百貨店の意義を見出しているのであれば、購買行動を通じて百貨店の営業が続くよう支援します。

百貨店の閉店数が増えることは、消費行動の結果であり、その結果に対する評価を「最悪」とする方もいれば、「最良」とする方もいるでしょうし、「どうでもいい」とする方もいるのが現実です。景気低迷を背景に様々な分野で企業倒産といった供給調整が生じていますが、それは新しい供給体制を構築するためのプロセスであり、そこに善悪はありません。経済厚生を低下させないためには、こうした供給調整に逆らうのではなく、供給調整に対応できる行動を常に取り続けることだと思います。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 痛みある決断を先送りした帰結でしかないJALの法的整理

グローバル投資のポイント
9:00
2010/01/15

日本航空(JAL)は、企業再生支援機構による監督の下、会社更生法適用による法的整理となることが確実視されています。JALに多額の融資をしてきた銀行団は、あくまで私的整理を主張してきたようですが、公的資金を投入せざるを得ない状況だけに、政府は法的整理によって責任を明確化することを決断したようです。

JALの法的整理については、立場によって賛否が分かれるようです。銀行団とすれば、JALの経営悪化の背景には、政府・与党がJALに不採算路線の運行を強いてきた、という思いがあるでしょうし、JALの株主とすれば、政府主導による法的整理で資産が強制的にゼロにされる悔しさもあるでしょう。

ただ、いろいろと思いがあるのは理解できますが、8千億円超ともいえる債務超過額を抱えている企業が、法的整理を回避するのは難しいのが現実です。痛みの少ない私的整理にて再建したいのであれば、再建後の収益性が高いことが必須となりますが、世界的に競争が激しい航空業界だけに、それも期待できません。ここで指摘されるまでもなく、JALの法的整理は、ロジカルには至極当然のことだったと思われます。

JALの法的整理が話題になっていた本日(2010年1月12日)、ベスト電器が、傘下の家電量販店「さくらや」を2010年2月末に清算すると発表しました。さくらや、といえば、かつてはヨドバシカメラ、ビックカメラと並んで「3カメ」と呼ばれる家電量販店でした。しかし、さくらやは、業績低迷が続き、2006年12月にベスト電器から出資を受け、2008年3月には完全子会社化されました。しかしベスト電器は、さくらやに再建の目処がたたないとして撤退と清算を決めています。

報道によると、さくらやの撤退および清算に伴い、ベスト電器は、195億円の特別損失を計上するようです。これにより2010年2月期は、45億3000万円の営業赤字、302億円の純損失を見込んでいます。

売上高3,500億円弱のベスト電器にとって、300億円を超える純損失は相当の負担です。それでも、さくらやの清算を決めたのは、(いろいろと議論・苦悩はあったにせよ)損失拡大を防ぐべく、企業経営として当然のことをするためです。

JALの話に戻ります。JALがこのような結果になってしまったのは、JALという巨大な半官半民会社が、従業員、株主、債権者、政府、そして「元」従業員、という様々な関係者を巻き込んだ存在だからでしょう。しかし、だからこそ、誰もが当然のことを決めることができず、8千億円超の債務超過、そして、1兆円ともいわれる公的資金の投入という結果になりました。

何も決められない企業の業績が、自然と改善することは、今の日本においては無理なことです。今の日本社会の様子をみると、関係者が数多く存在するために、何も決められず多額の損失を計上する例は、JALが最後ではない気がして仕方ありません。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 景気を引っ張る力はない日本の設備投資

グローバル投資のポイント
19:02
2010/01/14

1月14日に発表された09年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標となる民需(除く船舶・電力)は、前月比11.3%減の6,253億円と、現行統計開始(1987年4月)以来、最低の結果となりました。これにより、内閣府は、基調判断を「下げ止まりつつあるものの、一部に弱い動きがある」と12カ月ぶりに下方修正しています。

民需(除く船舶・電力)は、設備投資の先行指標であるとともに、景気の先行指標の面もあります。設備投資が拡大すれば、景気も拡大する、という考え方がベースにあります。11月の結果が、統計開始以来最低の水準となったことで、景気は回復しておらず、依然として厳しい状況にあるとの指摘もあるようです。

ただ、機械受注統計は、結果が上下に大きく振れる傾向があるのため、11月の結果だけで景気を判断するのは危険だと思われます。景気との連動性が強い機械販売額は、11月も横ばい圏で推移しており、景気回復を否定するほどの結果とはいえません。

また、11月の結果が弱かったのは、非製造業(特に通信業と金融保険業)の落ち込みによるもので、製造業は比較的健闘しています。世界経済、為替レートともに落ち着きを見せつつありますので、製造業の設備投資が、今後すぐさま、大きく落ち込むようなことはないように思われます。

しかし、機械受注の結果は、設備投資の回復がまだまだ先であることを示したのは事実です。非製造業の設備投資が落ち込んだのは、個人消費の回復が遅れていることが背景にあります。雇用・所得環境の改善には、まだまだ時間もかかるでしょうから、非製造業の設備投資が拡大するのも時間がかかることになります。

製造業の設備投資もあまり期待できません。日銀短観の設備判断DIをみると、製造業の設備過剰感は、最悪期を脱したとはいえ、まだまだ非常に強い状況です。アジア諸国とのコスト競争を考えると、日本の製造業が生産拠点を海外に移す動きを続けるでしょうから、国内の設備投資が回復したとしても、その規模は限定的と思われます。

設備投資は、景気回復に力強さを与えるものだけに、景気を重視する方々にとって、今回の機械受注の結果は、失望に値するでしょう。今後、日本景気が回復を続けるとしたら、まずは(いつものように)輸出拡大を待つしかない、と考えざるをえないのでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 購買力平価を用いて為替レートを推定する際の注意点

グローバル投資のポイント
9:28
2010/01/12

 為替レートの決定理論の一つとして有名なものに購買力平価説があります。購買力平価とは、財やサービス(商品)が同一であれば、価格も同一であるはずだとする「一物一価の法則」を前提としたもので、商品取引が二国間で自由におこなわれるのであれば、二国間の為替レートは、二国間の同じ商品を同じ価格になるよう変化するという考え方です。

 たとえば、米国と日本で全く同じ品質のリンゴが存在するとし、このリンゴは、米国では1個1ドル、日本では1個100円で販売されているとします。この場合、一物一価が成立するのであれば、為替レート(ドル円レート)は、1ドル=1個=100円→1ドル=100円となります。

 購買力平価説では、物価が下落しやすい国ほど自国通貨が上昇することになります。リンゴの例の場合、米国では1個1ドル、日本では1個100円で販売されているリンゴが、日本だけ1個50円に下落すると、1ドル=100円の関係は、1ドル=50円、つまり円高へと変化します。

 購買力平価説を用いて為替レートを推定する場合、ある特定の時期の為替レートを基点とし、その後の二国の物価のそれぞれの変化を基点に当てはめます。たとえば、基点とするドル円レートが100円だったとし、米国の物価は変わらず、日本の物価だけ2%低下したとすると、購買力平価説によって推定される為替レートは98円(100円から2%円高)となります。

 しかしこうした方法で為替レートを推定することは問題があります。それは、基点として使用する為替レートが、適切なものであるとは限らないからです。書籍などでは、購買力平価説からドル円レートを推定する場合、基点として1973年4-6月期のレート(1ドル265円)を用いることが多いですが、これは、1973年4-6月期が、日米の経常収支がほぼ均衡し、貿易に関する政治的圧力も少ない時期とされているためです。

 しかし、1973年4-6月期を基点とし、購買力平価説に基づくドル円レートを推定しても、現実との乖離が非常に大きいのが現実です。物価指標として日米のGDPデフレータを用いてドル円レートを推定すると、2009年7-9月期のドル円レートは132.8円と、現実の為替レート(93.6円)から3割も円安水準となります。

 購買力平価は「一物一価の法則」という直感的に理解しやすい理論をベースとしているだけに様々なところで目にすることが多いですが、現実との乖離が大きいことを考慮すると、機械的に用いるのは不適切のように思われます。たとえ経常収支が均衡していたとはいえ、今から40年近く前の為替レートを基点とし、物価変動だけで為替レートを推定することは、無理があるようです。

 仮に購買力平価説を用いて為替レートを考えるのであれば、二国間の物価変動のみに注目し、現時点での為替レートからの変化を検討する方法がよいでしょう。たとえば、1年後の物価が米国が1%上昇する一方、日本が1%下落すると予想されるのであれば、ドル円レートは、1年後に2%の円高圧力が加わる、ことになります。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ ドル一極体制からの脱却準備を意味する外銀の元建て債券発行解禁

グローバル投資のポイント
14:14
2009/12/25

12月25日付の日本経済新聞は、中国政府が外資系銀行に中国本土で人民元建て金融債券の発行を解禁すると報じています。報道によると、三菱東京UFJ銀行の中国法人が、外資系銀行の第一号として元建て債券の発行認可を取得したそうです。また別の報道によると、三菱東京UFJ銀行は、2010年2月に債券を発行し、発行規模が最大10億元、期間は2年間を想定しているようです。

これまで、中国での元建て債券の発行は、アジア開発銀行など国際金融機関や政府系金融機関に限られており、民間の外資系銀行が人民元を調達するには、預金や銀行間での賃借に頼るしかありませんでした。外資系銀行が、中国本土で元建て債券を発行できることで、外資系銀行は、2、3年の中期的な期間で資金を調達することができ、中国に進出している外資系企業に人民元を安定的に融資することが可能となります。

中国政府が外資系銀行に元建て債券の発行を解禁することは、現在の中国経済の現状を考えると、それなりの決断の要る判断だったと思われます。中国の11月のマネーサプライ(M2)が、前年同月比29.7%増と、過去最高の伸び率を示したように、中国の金融緩和は、危険水域の水準にあるとの指摘もあります。こうしたなか、外資系銀行が債券発行によって人民元を調達できるようになると、預金金利の引き上げによる金融引き締め効果が弱くなり、インフレへの対応が後手に回る可能性がでてきます。

それでも、中国政府が外資系銀行に元建て債券の発行を解禁した背景には、中国政府が人民元の国際化を進める意図があるからだといわれています。外資系銀行が債券を通じて人民元を調達できれば、より広範囲に人民元建ての融資をすることが可能となります。

中国に進出した企業も、銀行の人民元の調達が楽になったことで、人民元の資金繰りが楽になる可能性が高まります。これにより、中国政府が進めようとしている人民元での貿易決済が、取り組みやすくなります。

中国は、ドル一極体制からの脱却のために着々と準備を進めている、と考えたほうが良い気がします。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 直感とは逆に回復を続けそうな日本経済

グローバル投資のポイント
14:07
2009/12/22

12月21日に発表された貿易統計速報(11月)によると、輸出は前年比6.2%減と、減少率は、昨年10月以降で最も小幅となりました。輸出を地域別にみると、米国向けが前年比7.9%減、EU向けが同15.9%減となった一方で、アジア向けは同4.7%増と1年2カ月ぶりの増加となりました。

アジア向け輸出がプラスに転じた理由は、中国向け輸出が前年比7.8%増と大きくプラスになったためです。総額4兆元の景気対策が実施されていることで、スチレン(プラスチックの原材料)などを中心に輸出が拡大しています。

アジア向け輸出を数量と価格に分解すると、数量が前年比11.9%増となる一方で、価格は前年比6.4%の低下と方向性が分かれています。しかし輸出価格については、今年11月末のドル円レートが86円台と、昨年11月末(95円台)から1割近くも低下していることを考えれば、為替の影響を除くベースでは(若干でしょうが)プラスといえます。これは、アジア向けだけでなく、米国向けやEU向けも同じことが言え、輸出価格は持ち直していると判断してよさそうです。

足元では、ドル円が2カ月ぶりに91円台半ばを回復しており、12月の輸出価格は為替レートの影響を含めても前年比プラスになる可能性がでてきました。輸出は日本の輸出企業の生産活動(ひいては日本景気)に直結しますので、12月の経済指標は生産活動を中心に回復基調が強まる期待が高まるでしょう。

日本経済新聞社がまとめた「社長100人アンケート」によると、日本景気が本格回復する前に再び下降する「二番底」を警戒している経営者が全体の47.2%を占めているそうです。内需の低迷やデフレなど、日本景気の先行きを懸念する要因はたくさんありますので、アンケート結果は、比較的、納得できるものといえるかもしれません。

しかし、ギリシャの格下げ問題などもあってユーロが売られやすい局面であることから、ドル買戻しの動きは、もう少し続くと見たほうがよさそうです。ドル安の動きに歯止めがかかるのであれば、日本の輸出がすぐに変調をきたすことはなく、輸出主導の景気回復、という構造は、相変わらず変わらないわけですが、日本景気の回復の動きも続くことになります。日本株もペースは緩やかながらも上昇基調が続いています。繰り返しになりますが、ドル安に歯止めがかかる間、日本の個人投資家は、比較的安心して相場を眺めることができる気がしています。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 誰も語らない成長戦略の本質

グローバル投資のポイント
8:41
2009/12/18

12月16日、政府の成長戦略策定検討チームは、小泉政権で経済財政相を務めた竹中平蔵氏を招き、成長戦略の策定に向けたヒアリングを実施しました。竹中氏は、規制緩和や郵政民営化といった「小さな政府路線」を主張する人物だけに、ヒアリングにおいて大きな対立が出るだろう、とマスコミは期待していたようです。

マスコミ報道によると、竹中氏は

・経済成長の基礎は供給側だと考える
・国家戦略室による経済と財政の一体運営の姿がなかなか見えてこない
・規制緩和、競争政策、民営化が大変重要なポイントだが、郵政は逆の方向に行き、再国有化されたのと同じで大変残念だ

と、いつものように持論を展開しました。

一方、ヒアリングに同席した菅副総理は、「小泉・竹中路線で企業は活性化したが、リストラで失業者が増え、成長につながらなかったのではないか」と反論し、「まず需要を作ることが先決ではないか」と発言しています。また菅副総理は、

・公共事業で経済を成長させるのを第1の道
・改革を進める小泉・竹中路線を第2の道
・雇用が需要を生む政策が第3の道

として、現政権は第3の道を選択しているので雇用政策を常に打ち出している、と述べています。

マスコミ報道では二人の議論を、供給側の竹中氏と需要側の菅副総理、と整理しています。二人が使った言葉をそのまま使っただけですので、一見分かりやすい整理のように思えますが、本質を外した整理のような気がします。

議論のテーマが成長戦略であるならば、議論において想定する時間軸は、1カ月後とか半年後といった短期的なものではなく、短くても3年後から10年後くらいが前提となります。短期的な景気悪化は、常に需要不足となるので、政府がこれに対応するのであれば、財政政策を利用したり、金融政策で金融面を調整することになります。

ところが、中長期にわたって需要が不足しているとすれば、それは供給側が需要に対応できていないと考えることもできます。供給が足りない部分は需要過多になる一方で、供給が大量にあるところは需要不足になりますが、需要不足の部分が、いつまでも経済全体に大きく占めていては、需要不足が慢性化します。

こうした状況にもかかわらず、需要不足を短期的な景気悪化と判断し、常に財政政策や金融政策で対応していては、いつまでたっても供給側の変化が生じず、需要不足は止まりません。これまでの日本経済の推移を考えれば、現在の需要不足が短期的なものではなく、中長期的なものである可能性が高く、供給側の変化が求められているといえます。

残念ながら、供給側の変化は、短期的には難しく、時間をかける必要があります。成長戦略は、需要側の変化を見据えながら、供給側をどのように変えていくかを決めていくものといえます。言い換えれば、中長期での景気を語る際には、需要と供給の両面を考えるといえます。

竹中氏と菅副総理が、成長戦略の時間軸を中長期であることを理解した上で議論したのであれば、じつは二人とも同じ目的を別の観点で語っているのであり、対立しているのではなく、必要である二つのテーマを別々に語っただけといえます。よって、マスコミの整理は、本質を無視した内容といえます。

悲劇的なのは、成長戦略を考えるのに際し、現在の需要不足を短期的な景気悪化の一種と考えている場合です。この場合、マスコミの整理は的を射ているわけですが、成長戦略の是非を語っているマスコミも成長戦略の本質を理解していないことになります。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 実感なき景気回復を示した12月調査の日銀短観

グローバル投資のポイント
17:53
2009/12/14

12月14日に発表された12月調査の企業短期経済観測調査(日銀短観)によると、企業の景況感を示す業況判断DIは、大企業製造業でマイナス24と、市場予想(マイナス27)を上回り、3四半期連続の改善となりました。今回の調査は、ドル円が一時84円台をつけた直後でしたが、自動車や電機などの輸出産業の業況判断DIが大きく改善しており、ドル円下落の影響は限定的といえそうです。

意外だったのは、雇用の過剰感を示す雇用人員判断DIが、全規模・全産業で低下した(雇用過剰感が少なくなった)ことです。マスコミでは、日本の雇用環境が厳しいかのように報じられることが多いですが、10月の完全失業率が5.1%と、9月に比べて低下するなど、マスコミ報道とは逆に、雇用環境は改善傾向にあるといえます。

日銀短観の業況判断DIは、景気との連動性が強いこともあり、今回の結果から、日本景気は回復基調を続けている、と判断してよさそうです。来年3月時点の景況感予想を示すとされる業況判断DIの先行き予想は、製造業、非製造業ともに改善を示しているので、よほどの外的ショックがない限り、企業の景況感が3カ月後に悪化することはないでしょうし、ひいては日本景気も悪化に転ずる可能性は低いといえます。

ただ、日本景気が回復過程を続けるとしても、それをもって日本のGDP成長率が高まることを意味するわけではありません。おそらく、今後の日本景気は、景況感が改善したとしても改善ペースは緩やかなものである可能性が高まっているからです。

成長率が高まらない最大の理由は、企業の設備投資が昨年度に比べ減少する可能性が高まっているからです。日銀短観の設備投資計画によると、今年度の大企業・製造業の設備投資計画は、前年度実績比28.2%減と、現行の調査方式を採用した73年度以降、最大の減少率を記録しています。今後、設備投資計画が上方修正される可能性があるとはいえ、設備投資が2割以上も削減されれば、GDP成長率が低迷するのは避けられません。

雇用環境の悪化に歯止めがかかったとはいえ、個人消費が拡大基調を続けるとは期待できません。雇用人員判断DIが改善したとはいえ、雇用者数は全産業・全規模で1%以上のマイナスになっているほか、新卒採用計画は来年度(2010年度)2割以上のマイナスとなっています。雇用者数が減少する以上、個人消費が拡大すると期待するのは難しいです。

おそらく、こうした見方は、市場関係者の間では共通だと思われます。日銀短観は改善しているが、回復の実感はさほどない、というのが、今回の結果のまとめとなるでしょうし、しばらくは、それが続くと思われます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 政治主導の意思決定の怖さを感じるGDP統計の作成方法見直し検討の表明

グローバル投資のポイント
16:52
2009/12/10

12月10日、内閣府の津村啓介政務官は、機械受注統計の記者会見で、国内総生産(GDP)統計の発表時期や作成方法の見直しについて検討する方針を明らかにしました。津村氏は、記者会見にて「08年度のGDP確報値にもミスが見つかり、統計の信頼性を高める観点から整理する必要がある」と述べています。

津村氏がGDP統計の作成方法等の見直しを表明した理由の一つに、2009年7-9月期GDPの修正があります。12月9日に発表された2009年7-9月期の実質GDP(二次速報値)の伸び(前期比年率)は、11月16日に発表された一次速報値より3.5%も下方修正されました。一次速報値では加味されない法人企業統計にて、設備投資や在庫投資が大きく減少したことで、GDP全体も下方修正されたためです。

マクロ経済指標に詳しくない方々と話をすると、一次速報値と二次速報値との間に大きな乖離があることに違和感を抱く方が大半でした。同じ統計なのだから、一次であろうが二次であろうが、大きな違いがあるのは不自然、という考え方は、一般の方であれば当然かもしれません。

しかし、一次速報値と二次速報値との間に大きな乖離が生じることを理由にGDP統計の作成方法を見直すのは、あまり合理的なこととは思えません。一般の方々の気持ちは理解しますが、速報値が二段階に分かれている以上、大きな乖離が生じることは承知したうえで統計を利用すべきと思われます。

現在の推計方法を採用したのは、公表が遅れがちだったGDP統計の速報性を高めるためでした。統計は速報性を高めれば高めるほど、推計誤差が大きくなり、速報性を無視すれば、ある程度、誤差を小さくすることも可能です。しかし、統計は正確であれば公表が遅くてもよい、というわけではなく、できる範囲で速報性を高めることも重要です。

今回、二つの速報値に大きな乖離が生じる原因となった法人企業統計は、調査対象企業数が多いこともあり、公表タイミングが遅れ気味の統計です。ただ、正確なGDPを推計するにあたり、法人企業統計はGDPを推計する際に必須といっていいほど重要な統計ですので、法人企業統計を使わずにGDPを推計することは現実的ではありません。

そこで内閣府は、2002年8月に推計方法を現在のものに変更することを公表しています。当時、内閣府は、欧米諸国に比べ公表が遅れ気味である日本のGDP統計の速報性を高めるべく、迅速に得られる統計のみを用いて一次速報値を作成し、その後、法人企業統計など公表が遅れ気味の統計を使って精度の高い二次速報値を作成する二段階方式を採用しています。

あくまで邪推でしかありませんが、GDP統計の作成方法見直しの検討を表明した津村氏は、こうした経緯をよく存ぜず、同じ統計なのに二つの速報値との間に大きな乖離が生じていることを問題視した気がします。また、津村氏が指摘した08年度のGDP確報値の誤りは、(内閣府が公表した理由によると)人的要因によるものであり、GDP統計の作成方法を見直すべき理由になるとは思えません。

経済統計を使って物事を考える人間としては、今回の件をきっかけにGDP統計の作成方法が見直され、せっかく速報性が高まったGDP統計が、以前のように速報性がないものになることを非常に懸念しています。政権交代により、行政の意思決定が官主導から政治家主導になることを否定するつもりはありませんが、官僚という専門知識を有するスタッフを使わずに意思決定する怖さは、こんなところでも表面化するのだと勉強させられます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 投資頼みの中国経済の先行きリスクとは?

グローバル投資のポイント
18:39
2009/12/09

12月7日、中国共産党・政府が2010年のマクロ経済政策の基本方針を議論する「中央経済工作会議」が閉幕しました。会議では、昨年の金融危機をきっかけに始まった積極的な財政支出と金融緩和が続けられることが決まっています。

中国景気は、景気刺激策の効果もあり、回復傾向が強まっています。しかし、金融緩和策を背景に、株式や不動産の価格上昇が急ピッチで進んでいます。たとえば、上海株価は、すでに年初来8割以上の上昇を記録しています。こうしたことから、市場関係者の間からは、今回の会議で金融緩和策を修正するとの見方も出ていました。

それにもかかわらず、中国政府・当局が、金融緩和の継続を決めたのは、回復傾向にある景気の先行き懸念が強いためと思われます。中国の輸出は、減少幅が縮小傾向にあるものの、10月でも前年比13.8%減と、冴えない状況が続いています。そんな中、中国景気をけん引しているのは、固定資産投資です。10月の都市部固定資産投資は、前年比31.6%増と、中国経済を支えています。

政府・当局としては、固定資産投資の拡大は、痛し痒しのところがあります。固定資産投資が拡大すれば、経済成長率は高まりますが、中長期的には生産能力が高まるので、物価の押し下げ圧力が高まります。特に中国最大の輸出先である米国景気の低迷が長期化する可能性があるだけに、固定資産投資の拡大は、デフレの種をまくことを意味します。

本来であれば、中国政府・当局は、固定資産投資の代わりに個人消費を伸ばすことで、より安定的な経済成長を目指したいところです。しかし、あまり報道されることはありませんが、中国の雇用環境は、厳しいとの指摘が増えています。これでは、個人消費が固定資産投資に代わって景気を下支えすることは難しいでしょう。

政府の宣言をきっかけに、日本ではデフレが話題になっています。比較的高成長を続けていると思われている中国ですが、デフレ懸念が強いことは、日本と同じような気がしています。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 憶測にすら値しない日本政府の米国債売却報道

グローバル投資のポイント
15:10
2009/12/04

12月3日、米情報配信大手のブルームバーグは、マーケット・ニュースの報道として、日本政府が国内プログラムの資金を調達するため、米国債1,000億ドル(約8.8兆円)の売却計画を米政府に通達するとの「憶測」があると報じました。報道によると、MNSは、この報道に関する情報源を明らかにしていないそうです。

翌日、平野官房長官は、閣議後の記者会見で、日本政府が米国債の一部を売却するとの「憶測」があるとの報道について、「まったく現時点でそういう話はない」と否定しています。平野氏は「誰が発信したかは分からないが、こういう時期になってくると、よく知恵として出てくる」と指摘し、「政府として考えているということはない」とコメントしています。

日本政府は、外貨準備として大量の米国債を保有しています。2009年10月末の外貨準備高は、1兆567億6900万ドル(約93兆円)ですが、その多くは米国債で運用されているといわれています。これだけ巨額の外貨を有しているのであれば、1,000億ドル程度を売却しても問題ないように思われるかもしれません。

また12月3日に開催された政府税制調査会では、2010年度の税制改正として、一般扶養控除を国・地方ともに廃止する方針が決められています。これにより、所得税で8,000億円、住民税で6,000億円の税収増が見込まれるそうですが、一般扶養控除を廃止して(せいぜい)2兆円足らずの税収増になるくらいなら、米国債を売却したほうが手っ取り早く効果的いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

こうした考えは、一見すると合理的のように思われますが、日本政府が外貨準備を使って米国債を売却するのは、いろいろと問題があります。

短期的な問題は、円高の進展です。米国債を1,000億ドル売却することは、多少時間をかければ技術的には可能でしょうが、売却後に得られる資金はドルです。仮に財政支出のために米国債を売却するのであれば、売却後に得られたドルを円に換える必要があります。1,000億ドルもの資金を円に換えるとなると、円高圧力が高まるのは避けられません。つい先日、円高とデフレに対する危機感を表明している日本政府が、円高を促すような行動を取ることは難しいでしょう。

長期的な問題は、財政赤字の固定化です。あまり知られていないことのようですが、日本政府が保有する外貨準備は、政府が発行する外国為替資金証券(通称「為券(ためけん)」)という一種の国債によって資金を調達し、その資金を外貨に換えたものです。言い換えれば、現在1兆円以上もある外貨準備の多くは、借金によって構成されているものといえます。

このため、仮に外貨準備である米国債を売却し、為替レートに影響を与えずに円に換えることができたとしても、それを財政支出に使ってしまえば、為券という借金だけが残ることになります。これでは、国債を新たに発行して財政支出することと全く同じことになります。

こうしたことを考えれば、財政支出のために外貨準備である米国債を売却する、という話は「憶測」にすらならないことがわかります。ただ、外貨準備の多くを米国債に固定化されていることは、日本として問題なのは事実です。財政支出のため、税収確保のため、といった視点ではなく、日本の財産を有効的に使うため、米国債の保有戦略を検討することは重要でしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 米国経済が立ち直るまで続く新興国の苦労

グローバル投資のポイント
9:03
2009/12/04

各種報道によると、香港金融管理局は、12月3日午後、38億7500万香港ドル規模の香港ドル売り・米ドル買いの為替介入を実施しました。11月にも9日、10日、16日、17日と相次いで香港ドル売りの介入を実施するなど、香港金融管理局は、1米ドル=7.80香港ドルのペッグ制を維持しようと頑張っています。

香港に限らず、新興国は、米ドル安の進展にいろいろと苦労をしています。たとえばブラジルは、10月に、海外からの株式・債券への投資資金を対象に2%の金融取引税を導入し、11月には、国内企業が発行した米国預託証書(ADR)の取引に1.5%の課税を決めています。ブラジルでは、米ドル安の進展を見越した投機資金が大量に流入しており、結果としてレアル高が進展しています。ブラジル当局としては、課税措置を導入することで、自国通貨高を促す資本流入を食い止めたいのでしょう。

ただ、新興国にとっては気の毒な話ですが、彼らがドル安に対抗すべく、為替介入や資本規制をしたとしても、結果として米ドル安(自国通貨高)を完全に食い止めることは難しいでしょう。米ドル安は、新興国によるものではなく、あくまで米国経済に起因するためです。いくら新興国が努力しても、米国経済に大きな変化がなければ、彼らが望む結果を得る可能性は低くなります。

米国では、いよいよクリスマス・年末商戦を迎えていますが、結果はそれなりに好調のようです。米調査会社のコムスコアによると、米国の年末商戦におけるインターネット通販の集中日の1つとされる「サイバーマンデー(今年は11月30日)」のネット通販売上高(除く旅行)は、8億8700万ドルと、1日のネット通販売上高としては過去最高だった昨年12月9日と同水準を記録しました。

しかし、売上高を顧客数と一人あたり売上高に分解すると、ネット通販顧客数は前年比6%増となる一方、1人あたりの売上高は同比1%減となっています。あくまで推測でしかありませんが、米国で低価格志向が強まった結果、同商品でも単価が低いネット通販に消費者が移動したため、数量効果でネット通販の売上高が押し上げられたと思われす。つまり、ネット通販に客を奪われた伝統的な小売業者は、代わりに売上高を落とし、クリスマス・年末の個人消費全体は、期待しているよりも伸び悩む可能性があります。

個人消費がGDPの7割超を占める以上、個人消費全体で盛り上がりに欠ければ、米国の経済成長率も伸び悩むことになります。成長率の回復が見込みにくい以上、FRBが出口戦略を実施する時期も後ずれすることになれば、運用利回りも低水準での推移を強いられ、米ドルを買い進む理由が見出せなくなります。米国経済がもたついている間、香港やブラジルだけでなく、他新興国でも米ドル安に起因したいろいろな苦労を強いられることになるのでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ ドバイショックではない今回のドル円下落

グローバル投資のポイント
13:51
2009/11/27

昨日、本日とドル円が大きく下落しています。11月26日の為替市場では、ドル円レートが86円29銭を記録し、14年4カ月ぶりの水準まで下落しました。この日は、米国が感謝祭(休日)だったこともあり、取引が薄くなることを見越した投機的な取引が相場を大きく動かしたようです。

翌日(27日)もドル円は下落します。午前8時過ぎからドル円の下落スピードは加速し、一時84円82銭と、あっさりと85円のラインを割り込みました。その後、藤井財務相が為替介入について踏み込んだ発言をしたことから、ドルを買い戻す動きが強まり、86円を回復する水準までドル円は戻っています。

今回のドル円の動きを「ドバイショック」と称する方もいらっしゃるようです。ドバイショックとは、ドバイ政府の持ち株会社「ドバイ・ワールド」が、債権者に総額590億ドル(約5兆円)の債務の繰り延べを求めることが発表され、金融市場に影響を及ぼした、というものです。債務の大きさが巨額なだけでなく、ドバイが、中東の金融センターとして急発展してきた象徴的な場所であったことも、「ショック」と名づけられる所以なのかもしれません。

ただ、ドバイ・ワールドの件で、ドバイから出資を受けていた企業の株や、ドバイへの融資を積み上げていた銀行の株が売られたとしても、ドバイ・ワールドの影響でドル円が下落した、というのは、やや無理があるロジックかと思われます。

おそらく、ドバイ・ワールドの件とドル円の動きをリンクさせようとしている方は、ドバイ・ワールドの件で市場の不安心理が高まったと「解説」されるのかもしれません。しかし、昨年の金融危機でも、市場の不安心理は高まりましたが、金融機関はドル資金の手当てを強めたため、ドルは(一時的でしたが)上昇しました。

ドバイ・ワールドの場合も、債務繰り延べが実施されるとすれば、ドバイ・ワールドの債務がドル建てである以上、ドル資金を手当てするニーズが高まるはずです。それにもかかわらずドル円が下落したのは、ドバイ・ワールドに関連したドル需要の高まりよりも、ドバイ・ワールドの件をきっかけに、ドル安の流れが後押しされたため、と考えるべきでしょう。

米国のバランスシート調整を背景に、米国は日本と同じようなデフレ構造に入っており、米国の短期金利は、日本を下回る低水準になっています。米国の低金利は、今後も続く可能性が高く、ドルの上値を抑える展開が続くと思われます。今回のドル円の動きは大きかったですが、それを特定のニュースによる一時的なものと考えるよりも、今後も続くであろうドル安の流れが、目立った形で出てきたもの、と考えたほうが合理的な気がします。


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■ 日銀が頑張ればよいという単純な話ではないデフレへの対処法

グローバル投資のポイント
15:47
2009/11/25

11月24日、藤井財務相は、閣議後の会見で、物価は金融の問題であり、デフレに対する金融の役割が大事と述べ、日本銀行の金融政策に期待感を示しました。また、亀井金融相は、「日銀は眠り病にかかっている」と述べ、日銀が追加的な金融緩和に否定的なことに対し不快感を示しました。

物価は、モノ・サービスと貨幣の交換比率と考えられるため、市中に出回る貨幣の量を増やせば、モノ・サービスとの交換比率も上昇するため、結果的に物価が上がると考えられています。しかし、日本で起きている物価下落(デフレ)は、貨幣の量が少ないから生じている、というよりも、モノ・サービスの需要が供給よりも弱いために生じている、と考えれています。藤井氏や亀井氏が指摘するように、単に日本銀行が金融緩和を強化したからといって、需要と供給の関係が大きく変わるわけでもなく、物価が上昇に転じるとは思えません。

金融政策は、実体経済の需要と供給の関係を直接的に変える手段ではなく、あくまで補助的な位置づけでしかありません。貨幣の量で無理やり需要と供給の関係を変えようとするならば、日本銀行が民間銀行を通じて貨幣量を調節するよりも、直接、市中に貨幣を流通させる必要が出てきます。おそらく、亀井氏などは、そのような手段を日本銀行に要望したいのでしょうが、そんなことをしても貨幣の信認が落ちるだけで、物価が上昇したとしても、株式や不動産といった資産価格が、より大きく上昇し、結果として貧富の差が拡大するだけのように思えます。

金融政策だけでなく、財政政策でデフレに対応するべきだ、という意見も出ています。亀井氏が代表を務める国民新党は、総額11兆円規模の二次補正予算案を発表しており、財政出動の受容性を主張しています。

マクロ経済では、需要と供給の関係を把握するために需給ギャップというものを推計します。需給ギャップは、経済全体の需要と供給の乖離を示すもので、需要が供給よりも小さいと需給ギャップはマイナスの値をとることになります。内閣府の試算によると、現在の日本の需給ギャップは、GDPの約8%(約38兆円)ものマイナスになっています。仮に二次補正予算で、この需給ギャップを埋めようとしたら、国民新党が提示する予算案でも足りないことになります。言い換えれば、需給ギャップを財政だけで埋めようとするのは、かなり無理があるといえます。

マクロ経済では、需要も供給も一つずつしかないように考えますが、実際の経済では、モノ・サービスごとに需要と供給があり、それぞれの関係性があります。たとえば、多くの方が「ハコモノはいらない」と指摘するように、建築物に対する需要は弱いですが、エコカーが納車待ち状態にあるように、特定のモノ・サービスは需要が供給を上回っています。

社会主義的な経済運営が失敗したように、需要と供給に関するきめ細かい動きを、政府が一元的に管理をしようとすることは、現実的ではありません。つまり、たとえ財源が豊富にあり、金額的には需給ギャップを埋めることができたとしても、全てのモノ・サービスの需給ギャップを解消することは難しいと考えるべきです。公共事業をいくらたくさんやっても、需要の弱い建築物が数多くできるだけで、エコカーの納車待ちが解消されるわけではないことからも分かります。

政府がデフレ宣言をしたこともあり、社会においてデフレ脱却の必要性が叫ばれるようになり、政府としても、何か即効性のある政策を捜し求めたくなる気持ちは理解できます。しかし、経済が複雑な仕組みで運営されているように、金融政策にせよ財政政策にせよ、いわゆる特効薬があるとは思えません。政府が必要なことは、複雑かつ細かく動いている民間の経済活動を活発にすべく、税制や規制といった環境整備を大胆に実施することのように思えます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 日本の後追いが予想される米国のデフレ表明

グローバル投資のポイント
15:15
2009/11/20

11月20日、菅副総理(経済財政担当)は、閣議後の記者会見で、日本経済は「デフレ状況という認識だ」と述べ、物価が継続的に下落する状況にあるとの見方を初めて示しました。政府がデフレを表明するのは、2006年8月以来(3年3カ月ぶり)となります。

日本で生活する方々にとって、日本の物価が下落傾向を続けていることに違和感はないだろうと思われます。今後も、家計所得の低迷が続く可能性が高いこともあり、物価の下落傾向は続くでしょう。また、日本で生活する方々の多くは、そうした状況に慣れている気もします。

物価下落が続く(いわゆるデフレ)という現象は、日本だけでなく、今後は米国でも馴染みにあるものになるでしょう。11月17日に発表された米国の生産者物価(10月)は、前月比+0.3%と、市場予想(+0.5%)を下回りました。市場予想を下回ったとはいえ、前月比でプラスなのだから、デフレとはいえない、という声もあるようですが、前月比+0.3%のうち+0.28%は、エネルギー価格の上昇によるものです。実際、生産者物価のうち変動の大きい食料とエネルギーを除いた最終財物価(コア指数)の伸びは、前月比▲0.6%と、2カ月連続のマイナスとなり、マイナス幅も拡大しています。

最終財の内訳をみると、ガソリンや暖房オイル、電力が1%程度のプラスとなっていますが、乗用車、玩具・ゲームが0.5%程度のマイナスとなっています。ガソリンといったエネルギーは、原油価格の上昇によるものですので、米国の需要が強いことを意味しておらず、むしろ乗用車などの物価が下落していることを考えると、米国の需要は、以前に比べ相当弱くなったといえます。

米国の物価については、超低金利政策が長期化することや、莫大な財政支出もあり、インフレ懸念が強い、という見方もあります。しかし、生産者物価の動きをみる限り、需要が強いとはとてもいえず、家計や企業のバランスシート調整が今後も続くことを考えると、足元で弱い需要が回復する見込みも薄いといえます。

日本経済がデフレに苦しみ始めたのは、企業のバランスシート調整が顕在化した98年からでした。今のところ、米国の家計や企業のバランスシート調整が大きく注目されることも少ないようですが、住宅価格の上昇が見込みにくい以上、いずれバランスシート調整が、家計消費や企業業績の重石になるでしょう。米国のバランスシート調整が注目される頃、菅副総理のように米国政府の要人がデフレを正式に表明することになるのでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 筋違いな反応を示した米国の株式市場

グローバル投資のポイント
15:45
2009/11/17

11月16日のダウ工業株30種平均は、前週末比136.49ドル高い1万0406ドル96セント、S&P500種株価指数は、15.82ポイント高の1109.30と、それぞれ昨年(2008年)10月2日以来(約1年1カ月ぶり)の高値で終えました。業種別S&P500種株価指数(全10業種)をみると、エネルギーや素材を中心に、全業種で上昇しています。

米国株が好調だったのは、10月の小売売上高が予想を上回る伸びを示しただけでなく、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の講演内容が好感されたためと思われます。バーナンキ議長は、講演にて、FRBが政策金利を異例に低い水準に長期間据え置く(低金利の長期化)公算が大きいと繰り返し述べました。

一般に、低金利の状態が続けば、企業の資金調達コストが低下するため、企業収益が押し上げられる期待が高まります。また低金利によって、消費者の借り入れコストも低下しますので、個人消費や住宅投資が拡大する期待も高まります。こうしたロジックが、米国株の上昇に寄与したと思われます。

しかし、バーナンキ議長が低金利の長期化を示唆したのは、米国がデフレのリスクに直面しているためと思われます。仮に低金利によって個人消費や住宅消費の拡大が見込まれるのであれば、物価安定に責任を持つFRBのトップとして、低金利によるインフレリスクに言及するはずです。小売売上高は予想外の伸びを示したかもしれませんが、失業率が10%を越え、労働時間も低下している状況を考えると、低金利が続いたとしても、米国のインフレ圧力が簡単に高まるとは思えません。

米国経済が、低金利の長期化を必要とするほどデフレリスクが高いのであれば、米国企業の収益性は悪化すると考えるのが自然です。FRBの考えが常に正しいわけではありませんが、株式市場がFRBの見方を信頼しているのであれば、米国株の上昇は、バーナンキ議長の真意を取り違えていることになります。

村田雅志(むらた・まさし)


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FXCMジャパンオフィシャルブログに記載されてる文章は、執筆者の個人的な見解や感想を記したものです。 よって、FXCMジャパンオフィシャルブログに記載されてる見解・意見・感想などは、執筆者に属し、株式会社FXCMジャパンの見解を示すものではございません。

■ ドル安を示しているに過ぎない金価格の上昇

グローバル投資のポイント
15:07
2009/11/13

すでにご存知の方も多いと思いますが、ここ数日、金価格の上昇が続いています。11月11日の金先物価格(NYマーカンタイル取引所)は、終値で前日比12.10ドル高の1オンス1,114.60ドルと史上最高値を更新しています。

金価格が上昇する背景として、ドル安が指摘されています。米国では失業率が10.2%を記録するなど景気先行き不安が高いほか、ゼロ金利政策・量的緩和政策の長期化が避けられないとの見方が強まり、ドルの下落が続いています。金の価値が一定であれば、ドル安に伴い、ドル建ての金価格が上昇する、ということになります。

ただ、仮にドル安によってドル建ての金価格が上昇したのであれば、円建てやユーロ建ての金価格は変わらないはずです。しかし実際には、円建ての金価格も上昇しています。日本で金先物取引をしている東京工業品取引所では、11月12日に1グラム3,247円(清算値)と年初来高値を記録しています。

ドル建てだけでなく、円建てでも金価格が上昇していることから、金に対する需要の高まりを指摘する声もあります。11月2日、インド準備銀行(中央銀行)は、IMF(国際通貨基金)から200トンの金を購入したことが判明しています。また今年に入り、中国が金保有量を600トンから1,054トン、ロシアが495トンから568トンに増やしています。

たしかに金需要が高まり、金価格がどの通貨建てでも上昇傾向にあるのは事実でしょう。しかし、ドル建てに比べれば他通貨建ての上昇ペースは緩やかです。また、物価上昇の影響を加味した実質ベースで金価格をみると、1980年代につけた1オンス875ドルは、現在の2,200ドルに相当します。つまり実質ベースで見れば、現在の金価格は、実質ベースの史上最高値の半値程度といえます。

そもそも、新興国が金保有高を進めているのは、ドル安によってドル建て資産が目減りすることを懸念したためといわれています。金需要の高まりも、ドル安によるものとすれば、金価格の上昇の主因はドル安といえます。

日本に住む我々とすれば、ドル安による金価格の上昇が、上昇ペースが緩やかとはいえ、円建ての金価格にも波及していることを懸念すべきと思います。言い換えれば、現在のドル円レートは、ドル安の流れを反映しきれていないともいえます。日本経済の脆弱性を考えれば、ドル安・円安のシナリオも十分ありえますが、ドル安の流れがドル円にも波及すれば、ドル円はさらに下落する展開となります。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 「強いドル」を共有できなかった藤井・ガイトナー会談

グローバル投資のポイント
9:50
2009/11/11

藤井財務相は、11月10日の夜、来日中のガイトナー米財務長官と会談しました。13日のオバマ米大統領の訪日を前に、経済政策面での日米協調を確認することが目的だったようです。

報道によると、会談では、藤井財務相が、日本経済を外需依存から内需主導に転換する方針を表明し、「今はいろいろあるが、ドル経済が基本だ」と述べ、日本として「強いドル」を支持する考えを強調したそうです。一方、ガイトナー長官は、日本の内需主導への転換を歓迎するとともに、米国が過剰消費体質を見直し、貯蓄率の向上に取り組む姿勢を示したといわれています。

会談終了後、藤井財務相は記者団に「経済についてはガイトナー氏と完全に一致している」と述べ、為替相場については、「ドル経済は基本であり、ガイトナー氏が強いドルを求めることは多としている」と述べたそうです。藤井財務相のコメントを素直に受け取れば、米国のドル高政策は続いている、と考えたくなります。

しかし、報道によると、ガイトナー長官は、藤井財務相の「強いドル支持」発言に対して、「うなずいた」だけであり、米国がドル高政策を望んでいる、と言明したわけではないそうです。この点については、日本経済新聞も解説面で指摘しており、見出しにて「ドル安対応に温度差」と指摘しています。

ガイトナー長官が言明したことが、米国の過剰消費体質の見直しと貯蓄率向上への取り組みであるならば、米国の経常赤字は縮小し、米国の資金需要も以前に比べ低下します。ドル高政策は、経常赤字をファイナンスすべく、米国への資金流入を続けるための施策ですが、資金需要が低下すれば、無理にドル高政策を続ける必要はなくなります。つまり、ガイトナー長官は、明言しないまでも、ドル高政策の必要性を示していません。

むしろ、今の米国にとっては、ドル高よりもドル安の方がメリットは大きくなっています。ドル安になれば、米国の輸出拡大し、米製造業の雇用拡大も期待できます。また、ドル安はドル建てでみた対外資産を拡大させるため、対外資産を多く保有する大手金融機関のバランスシート改善効果も期待できます。

ガイトナー長官が、日本の内需主導への転換を歓迎したように、今の米国は、ドル高政策で資金を集めることよりも、他国の需要拡大を取り込むことに興味を向けています。そんな米国に日本にとって都合が良い「強いドル」や「ドル高政策」の維持を求めても、米国が真面目に取り組むことはないのでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ ドル安政策への転換を示唆するオバマ政権の追加経済対策

グローバル投資のポイント
9:02
2009/11/09

オバマ米大統領は、ホワイトハウスで声明を読み上げ、追加対策の検討に着手したことを明らかにしています。具体的には、雇用促進を目的とした法人税減税や、中小企業への資金供給策のほか、輸出促進や米製造業の世界市場での販売支援も積極的に検討するとしています。

法人税減税や中小企業への資金供給策は、米国内だけで完結するものですが、輸出促進策は、輸出先との貿易摩擦を強めるだけに注意が必要です。特に中国に対しては、中国製の光沢紙と化学製品のダンピング(不当廉売)被害を認める仮決定をしたほか、自動車タイヤに対する緊急輸入制限(セーフガード)の発動、油田から原油を抽出する鋼管に反ダンピング関税の仮決定をするなど、米国が攻撃的な姿勢を示しています。今回明らかになった輸出促進策で、中国の対米姿勢を硬化させることは避けられないでしょう。

10月の米国の失業率は、10.2%と9月の9.8%から大きく上昇し、83年4月以来の10%超となりました。非農業部門雇用者数も前月比19万人減と、減少幅は9月から縮小したものの、22カ月連続の減少となり、第二次世界大戦後の最長記録を更新しています。また、9月の消費者信用残高は、前月比148億ドル減と8カ月連続の減少となりました。消費者信用残高は、自動車ローンやクレジットカード利用残高を集計したもので、消費に直結する借入額を示しています。

失業率が上昇し、消費者信用残高が減少を続けている以上、米国の消費が回復するのを期待するのは難しいでしょう。7-9月期の米国のGDP統計では、個人消費が前期比(年率)3.4%と、2年半ぶりの高い伸びを示しましたが、これはあくまで一時的なものとなりそうです。オバマ大統領が、輸出促進を含めた追加対策の検討を明らかにしたのも、米国の雇用を守るためには、米国の内需だけでは力不足で、外需の取り込みも必要と判断したためといえます。

米国が外需の取り込みを視野に入れたのであれば、1990年代後半から続けられてきたドル高政策も終焉すると考えるのが自然です。むしろ外需を取り込みたいのであれば、米国はドル高政策からドル安政策に転換することになります。

米国の雇用情勢次第とはいえ、米国のドル安政策は、そう遠くない将来に公言されるように思われます。その際、米国は、中国やユーロ、日本といった国々と連携をし、ドル安誘導を進める可能性もあります。つまり第二のプラザ合意もありえることになります。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 裏の理由を考えたくなるサウジのWTI利用中止

グローバル投資のポイント
13:24
2009/10/30

10月28日、エネルギー相場の査定を手掛ける英アーガス・メディアは、サウジアラビア国営のサウジアラムコが、米国向けの原油販売価格を決める基準として米国産標準油種(WTI)を使うのを止め、来年1月からアーガス社の指標に切り替えると発表しました。

WTIとは、「West Texas Intermediate(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)」の略で、アメリカ・テキサス州西部とニューメキシコ州南東部で産出される低硫黄の軽質原油のことを指します。WTIは、硫黄分が少ないため、ガソリンや灯油などを多く取り出せる高品質な原油とされています。

WTIの原油先物は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で取引されており、取引量が多いことから、北米原油価格の指標的な役割を果たしています。日本の報道で、単に「原油価格」と報じられる場合、ほとんどがWTIの原油先物価格を意味します。

報道によると、サウジアラムコが、WTIの利用を止める理由として、投機資金の影響でWTI原油価格が乱高下することが指摘されています。また、WTI原油の受け渡し場所であるオクラホマ州クシン周辺では、貯蔵能力の不足が表面化しており、技術的に受け渡しが難しくなり、価格が不安定になりやすくなったとの指摘もあります。

サウジアラムコがWTIの利用を止める理由は、おそらく各種報道の通りなのかもしれません。しかし、気になるのは、これまで対米追従姿勢を一貫として取り続けていたサウジアラビアが、彼等にとって非常に重要な原油販売価格について、米国ではない、英国の一企業の指標に切り替えた点です。

ドルが基軸通貨として流通している理由の一つとして、原油決済にドルが使われていることがあげられます。原油は、どこの国でも必要な物資のため、日本のような非産油国は、海外から原油を購入することが必然となります。

言い換えれば、原油決済にドルが使われている以上、非産油国は、自国通貨をドルに換える必要があります。原油を切らすことはできませんから、すぐにドルを必要としなくても、ある程度のドルを外貨準備として保有することも必要になります。

ところが、ドルでなくても原油を購入することができるのであれば、無理にドルに固執する必要もありません。この動きが強まれば、基軸通貨としてのドルの地位も低下することになります。

英インディペンデント紙は、10月6日、アラブと中国銀行筋の話として、中東の湾岸諸国が、日本、中国、ロシアなどと、原油取引をドル建てから、通貨バスケット建てに移行する秘密交渉を続けていると報じ、市場で大きく話題になりました。報道後、サウジアラビアやクウェートが、報道を否定しましたが、中東の産油国は、自国通貨をドルとペッグ(固定)しているだけに、ドル安による原油収入の目減りに不満を持っているのは間違いないでしょう。

こうしたことを考えると、サウジアラビアのWTI離れは、価格が不安定だから、という理由だけではないように思えます。


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■ 過度に悲観する必要はない設備投資額の減価償却費割れ

グローバル投資のポイント
15:25
2009/10/23

10月23日付の日本経済新聞は、09年上半期の設備投資額が減価償却費を下回ったと報じています。記事によると、設備投資が減価償却費を下回ったのは、02年上期、03年上期に続き、半期ベースでは3度目だそうです。

減価償却費とは、長期間にわたって使用される設備に要した総額を、設備が使用できる期間にわたって配分する際に発生する費用です。たとえば10年使える設備を2千万円で購入すると、毎年計上される減価償却費は(原則)200万円となります。

設備投資額が減価償却費を下回ることは、以前に設備投資した額よりも、現在の設備投資額の方が少ないことになり、設備投資総額が目減りすることを意味します。一般的に設備投資は、企業の生産性に大きく左右するものと考えられています。このため、設備投資総額が目減りすることは、日本の企業の生産性、ひいては日本経済の成長性が低下する、と考えることも可能です。日本経済新聞の記事も、エコノミストや大学教授のコメントを挿入しながら、設備投資の目減りによる悪影響を懸念するトーンになっています。

ただ、日本経済新聞が記事を作成するために利用した統計の性質を考えると、記事にて指摘された「設備投資額が減価償却額を下回る」という事実は、それほど大きく悲観視する必要もない気がします。

日本経済新聞が記事を作成するために利用した統計は、財務省が発表する法人企業統計と呼ばれるものです。法人企業統計は、資本金1千万円以上の企業約3万社を対象に、企業の財務諸表を四半期ごとに調査するものです。

先ほどご説明したように、減価償却費は、過去の設備投資額によって決まるため、設備投資に要した単位あたり費用(物価)も過去のものといえます。一方、現在の設備投資は、(当然のことですが)現在の物価が適用されます。

日本銀行が発表する企業物価指数を見ると、資本財の物価は1985年をピークに低下傾向にあります。今から10年前に該当する1999年と2009年とを比較すると、資本財物価は約2割も低下もしています。このため、実質的に同じ規模(数)の設備投資をしたとしても、物価が低下している分、設備投資総額は過去に比べて低下することになります。

日本経済にとって、設備投資の拡大は、長らくの間、経済成長のエンジンとして機能してきました。こうした図式が頭にあると、たとえ物価が下がったとしても、設備投資が低下することに危機感を頂くのは無理もないことですし、ましてや減価償却費を下回ることに懸念を示すのも無理はないことかもしれません。

しかし、日本経済が、デフレ傾向にある中、多額の設備を必要とする製造業から、軽微な設備でも事業が可能なサービス業へシフトすることも考えると、今後も日本の設備投資額が、減価償却費を下回ることは十分ありえます。過去のスキームを前提に、設備投資の低下を嘆くことよりも、新しい日本経済に資する設備投資のあり方を考えるほうが、我々にとって、より生産的な気もします。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 米国の影響力の強さを示す新興国の外貨準備拡大

グローバル投資のポイント
18:48
2009/10/19

最近、新興国の外貨準備高が急拡大しています。ブラジルの外貨準備高は、10月15日時点で2322億ドル(約21兆円)と、過去最高を記録しています。9月末の外貨準備高は2242億ドルでしたから、2週間程度で80億ドル(約720億円)も増えたことになります。

中国も外貨準備高を積み上げています。中国の外貨準備高は、9月末時点で2兆2726億ドル(約204.5兆円)と、ブラジルと同様に過去最高を記録しています。中国の外貨準備は、2006年2月に日本を抜いて世界一になりましたが、今では、中国の外貨準備高は日本の2倍以上の規模になっています。

あまり報じられていませんが、外貨準備高の拡大は、中国やブラジルだけの現象ではありません。台湾やタイの外貨準備高も、過去最高を記録しています。

新興国の外貨準備が拡大しているのは、ドル安による自国通貨高を防ぐために、通貨当局が為替介入をしているためです。中国を始めとする新興国の多くは、海外への輸出で経済成長率を高めています。自国通貨が上昇すると、輸出企業の採算性が低下し、景気が悪化する可能性が高まります。このため、通貨当局は、介入をしてでも自国通貨高を防ごうとします。

単に為替介入をするだけなら、ドル買い&自国通貨売りのオペレーションをすればいいだけです。しかし、これでは、売りに出した自国通貨が自国に還流し、物価を押し上げる(インフレになる)リスクが高まります。新興国の多くは、先進国に比べ需要が供給に比べ大きい傾向にあるため、自国通貨の流入は、物価押し上げ要因になりがちです。

このため、通貨当局は、為替介入と同時に国内に流通するマネーを回収し、流通するマネーの量(マネーサプライ)を一定にとどめようとします。この際に実施されるのは、中央銀行が国債といった債券を売却し、市中のマネーを吸収する「売りオペレーション」という金融政策です。金融界では、為替介入と売りオペレーションの組み合わせを「不胎化介入」といいます。

不胎化介入は、理屈の上では、すばらしい政策のように思えますが、それなりのリスクを政府が取ることになります。現時点において、外貨準備高が増えることは、ドル資産が増えることと(ほぼ)同義ですので、政府が多大な「ドル安リスク」を抱えることになります。また、売りオペレーションによるマネーの吸収は、インフレを抑制する効果があるものの、行き過ぎればデフレのリスクを高めます。

そもそも足元のドル安は、新興国によるもの、というよりも、米国の財政・金融政策によるところに起因します。米国のために新興国が、それなりのリスクを負うことに理不尽さを感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、新興国としてはリスクを取らない限り、経済成長を続けることが難しいのも事実です。いろいろと綻びは見えつつあっても、世界経済における米国の影響力は、まだまだ強いといえそうです。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 米株上昇のための2つのポイントとは?

グローバル投資のポイント
17:31
2009/10/16

10月15日のダウ工業株30種平均(NYダウ)終値は、1万0,062ドル94セントと、昨年10月3日以来の高値となりました。前日(14日)に1万ドルの大台を回復したNYダウは、当初、利益確定の売りが先行しましたが、ニューヨーク連銀景気指数や新規失業保険申請件数が好結果だったこともあり小幅高で終わりました。

NYダウが、金融危機以来の1万ドルを回復し、翌日もその水準を維持できたことで、株式市場には明るさも出てきているようです。14日に発表された米小売売上高も、自動車・同部品を除くコアが前月比0.5%増となるなど、米国景気にも明るい兆しが出ています。このまま、米国株が上昇を続ける、との見方も強まるのかもしれません。

しかし、米国株が、このまま上昇基調を続けると考えるのは、やや楽観的と思われます。米大手企業の多くが利益の点で回復軌道にあるのは事実ですが、利益の源泉となる売上高は、増えるどころか減少しています。いわゆる減収増益です。

減収にもかかわらず利益を増やせるのは、人件費を中心にコストをカットしたためです。米国の失業率が10%に迫っているように、米企業の人員削減が止まる様子はうかがえません。ただ、当然のことですが、企業が人員を削減し続けることはできません。

マクロの観点から考えると、米企業の国内売上高が増える見通しも持ちにくいと思われます。家計は、住宅ローンを中心とした負債の返済を進めており、消費を抑制する動きを続けています。雇用の減少に加え、負債の返済(貯蓄率の上昇)もある以上、個人消費が増える道筋は見出しにくいでしょう。

米企業の売上高が増えるとすれば、米国ではなく他国での売上が増える場合でしょう。BRICsに代表される新興国において米企業のシェアを高めることは可能かもしれません。その場合、ドル安が追い風になります。

言い換えれば、米国株が上昇を続けるのなら、ドル安の進展を背景に米企業が海外売上高を拡大させるシナリオが現実となる場合です。米国株の先行きを考える際には、ドルの行方や米国外の成長率をチェックする必要があるでしょう。


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■ 間違った意味で使われている「二番底」の本当の意味

グローバル投資のポイント
14:03
2009/10/15

日本経済新聞社が10月14日にまとめた「中小企業経営者調査」によると、景気が「二番底」に陥る危険性を感じている中小企業の経営者は、全体の68%になったそうです。また国内景気の現状認識において、「悪化している」と回答する中小企業経営者は、全体の36.5%となり、「拡大している」の割合(20.5%)を上回っています。

2009年9月調査の日銀短観・業況判断DIでも、中小企業・製造業が-52とマイナス幅が大きいですし、先行き見込みについても-44と改善幅が限定的です。中小企業の経営者は、景気の現状を厳しくみているだけでなく、先行きについても悲観的に考える傾向が強い、といえそうです。

少し気になるのが、「中小企業経営者調査」が、今後の景気悪化を「二番底」と表現している点です。エコノミスト業界では、「二番底」という用語には、きちんと定義があり、その定義をもとにすると、「二番底」が発生することは、考えにくいです。

おそらく一般の方々は、「二番底」という言葉は、「景気が回復したけれども、すぐに再び悪化する」ようなイメージ(意味)と思われているのでしょう。しかし、そのお考えは、正確ではありません。「二番底」とは、「景気悪化局面において、回復したかのような状況の後に、景気悪化が本格化すること」という意味です。

仮に、これから景気が悪化し、それが「二番底」だとすると、現時点においても景気は悪化局面にあることが前提となります。しかし、鉱工業生産や景気一致指数などから推察すると、日本景気は、遅くとも今年4月に景気の底を迎え、今年の8月まで景気拡大が続いているといえます。つまり、人々の景況感はともかく、経済指標からは、現在の日本景気は回復局面にある、といえます。

日本景気が回復局面にある以上、今後、仮に景気悪化を迎えたとしても、それは「二番底」ではなく、「次の景気悪化」となります。中小企業経営者が心配しているのは、現在の景気回復局面がすぐに終了し、次の景気悪化局面に突入することだといえます。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ 消費低迷だけを意味しない米消費者信用残高の減少

グローバル投資のポイント
12:36
2009/10/09

米連邦準備理事会(FRB)が発表した8月の消費者信用残高は、2兆4,627億ドル(約217兆円)となり、年率換算で前月比5.8%減少しました。前月比での減少は、これで7カ月連続となります。内訳をみると、クレジットカードなどの回転信用(リボルビング)が13.1%(前期比年率換算値)も減少しています。

日本ではあまり報じられていませんが、米国の消費者信用残高は、前月比でも減少することは非常に稀なことでした。統計が始まった1943年以来、前月比の減少が7カ月も続いたのは、今回を除くと、湾岸戦争により消費者マインドが急悪化した1991年5月から12月の期間のみです。仮に今年9月の消費者信用残高も前月比で減少すると、1943年以来、初めてのこととなります。

米国の場合、クレジットカードを中心に消費者信用による消費行動が根強く、消費者信用の減少は、個人消費の減少につながりやすいと考えられています。米国の個人消費については、先行きを楽観視する見方もありますが、消費者信用残高の減少が続いている以上、個人消費の回復を期待することは難しいと考えたほうが自然に思えます。

消費者信用残高の減少は、米国の個人消費の先行きだけでなく、世界経済のマネーフロー(資金の流れ)を考えるうえでも注目に値します。過去20年近く、貯蓄率を下げることで個人消費を拡大させ続けた米国の家計が、消費者信用残高を減らすことで貯蓄率を高める展開が予想されるからです。

米国の家計が貯蓄率を高めることは、個人消費を減少させるだけでなく、世界各国から受け入れてきた資本流入に歯止めをかけることも意味します。米国が資本流入に歯止めがかかれば、米国での運用利回りは、これまでのように高いことはなく、むしろ以前より低下することになります。

日本や中国のようにな貯蓄大国にとっては、これまでのように運用先としての米国に期待することが難しくなるともいえます。日本株が冴えない中、ドル安が進んだことで、米国への投資を検討し始めている個人投資家も多いと聞きます。しかし、以前のように、ドル安(円高)だから米国投資、という図式が、今回は通用しない可能性も視野に入れるべきでしょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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■ インフレを示唆しない金価格の上昇

グローバル投資のポイント
11:00
2009/10/07

10月6日のNY商品取引所では、金先物価格が、一時、1オンス1,045ドルと、1年7ヶ月ぶりに史上最高値を更新しました。オーストラリアの予想外の利上げや、中東産油国のドル離れ検討報道がドル安を進め、金価格を押し上げたようです。

金価格は、インフレ指標の代表例とされていることもあり、今後、世界経済もインフレに向かう、という見方があるようです。米国や日本、ユーロなど先進各国が金融緩和策を続けていることも、こうした見方に説得力を与えているようです。

インフレが進むのであれば、近いうちに先進各国の金融緩和策が終了する、いわゆる出口戦略が議論される、という指摘もあります。現在の金融緩和策は、過去に例のない異例の内容となっており、貨幣の信認が揺らぎつつある、という危機感も市場関係者の間で共有されつつあるからでしょう。

ただ、こうした見方は、合理的なように見える一方で、現実は、インフレとは逆の状況に思えます。たとえば米国の場合、金融緩和策で流動性の高いM1の伸びは加速しているものの、リスクマネーも対象に含まれるM2の伸びは、むしろ鈍化しています。米10年債利回りも、一時は4%近くまで上昇しましたが、その後、低下傾向で推移しており、足元では3.2%台と、5月20日以来の水準まで低下しています。

非常にラフな議論ではありますが、インフレとは、貨幣供給が財・サービスの供給に比べ過大となった時に生じます。ただ、気をつけなければいけないことは、インフレを議論する際に用いられる「貨幣供給」とは、中央銀行が発行する貨幣の量ではなく、市中に流通する貨幣の量を意味します。

米国のM2の伸びが鈍化し、10年債利回りが低下するのは、米国経済全体が、所有する資産を貯蓄する傾向を強めている結果といえます。貯蓄が増えれば、市中に流通する貨幣の量は減ります。

米国の貯蓄率の上昇は、経常赤字の縮小を通じ、日本やドイツ、中国の輸出拡大を阻み、結果として景気を下押しします。このような展開となれば、世界経済でインフレが進む、というよりも、むしろ逆にデフレ気味になる、と考えたほうが自然に思えます。

金価格の上昇は、将来のインフレを示唆したもの、というよりも、ドルという貨幣の価値低下を示しているものと考えたほうが良い気がしています。

村田雅志(むらた・まさし)


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